第4話 エピローグ


 若旦那、どうでした? 隠し資産は見つかったようですが、期待通りのものでしたか? 〈探り屋〉の経験から言わせてもらうと、お宝がザクザクなんて話はめったにありません。もし期待が裏切られたとしても、がっかりすることはないですよ。


 ほう、枯れ井戸の中から見つかったものは、お酒ですか。それも、御隠居が医者から禁じられていた焼酎。隠れてチビチビ飲んでいたなんて、よほど、お好きだったんでしょうね。ああ、報酬の一割については結構ですよ。私は下戸げこなもので遠慮しておきます。


 そんなことより、ことが終わったのに、意識を失ったままの弟子を御隠居の横に並べておくなんて、本当に申し訳ありません。実はトラブルがありまして、弟子はまだ御隠居の中にいるのです。あとで必ず、私が引き取りにまいりますので、それまではどうかお許しください。


 という風に若旦那には話しておきました。


 ええ、ハチの件については説明が必要ですね。ハチは結局、御隠居の頭の中から出られなかったのです。考えてみれば当たり前。頭の中から出る方法をハチは知りませんからね。


 ハチは今頃、肩を落としてダンジョンの中を歩きまわっていることでしょう。もしかしたら、欲をかくんじゃなかったと反省しているかもしれないし、後悔しているのかもしれません。


 ひんすればどんする、といいます。ハチのしでかしたことは、たぶん貧乏からきているのでしょう。あれでも初めての弟子ですし、私には責任があります。心の底から謝ってきたのなら許してやろうと思います。


 私の頭を殴ったり、御隠居の資産を盗もうとしたりしたことは、一時の気のでしょうからね。だけに。



                   了


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無事帰ってくるまでがダンジョンです 坂本 光陽 @GLSFLS23

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