第3話 地獄からのお誘い
〜 19時 某大型スーパー フードコート 〜
結局この日はフードコートで食事を済ます事にした…と言うかフードコートを通り過ぎ用としたら少し古いがペッパーライスの文字に引かれただけだ。
喋れなくてもスマホのアプリで読み上げ機能を使えば注文はできる、店員は面食らった顔をしたが喉の傷を見て何かを察してくれてスムーズに注文が通ったのはありがたい。
(ここのフードコートは店員の教育がいいのか普通に対応してくれたな、助かった)
下手な店の店員だと喉の傷を見せても喋って注文をしろとか言われるからな、気配りができる店員がいる店は本当にありがたい。
だから俺は食べ終わった後に返却して満足しながらフードコートを後に…ん?
(あれは…?)
そしてそのまま買い物を済ます為に歩きだしたのだが、ある店の前で足が止まる。その店はアウトドア用品専門店ではあるが、どうやら閉店セールの真っ最中でありかなりの人が店内にいた。
(…あ、そういえばガスマスクのフィルターの予備も無いんだっけか。ついでに買って行くか)
それを見て思い出したのはダンジョンから身を守る為に所持を義務付けられたガスマスク、そのガスマスクのフィルターの予備がもう無い事だった。
ダンジョンに行かなくても万が一に備えて半年に一回はフィルターの交換が法律で義務付けられている、だから予備のフィルターもメーカーごとに用意されているから価格はピンキリだ。アウトドア用品専門店ならダンジョン用の商品も置いているはず、だからそのまま俺はその店に向かって歩きだしたのだった。
〜 数十分後 〜
取り敢えず結果的にはガスマスクを新しく買い直す羽目になった。
いや、うん。俺だってビックリしたよ。だって俺が使っていたガスマスクのメーカーが合併してガスマスクの規格が変更になったからフィルターの製造を5ヶ月前に生産終了させたとか思わないじゃん。2年前に買いだめしてたから全然知らなかった、おかげで新しく別のメーカーのを買い直すしか選択肢がなかったよ。
(…ま、それで前より遥かにグレードが高くて最新モデルの奴が45%OFFで買えたのはデカいな)
目まで保護する最新式のフィルター交換式のガスマスクに視界確保用の暗視機能とライト機能、除湿&防臭と防水加工に加えオマケに救難信号を発信する装置付きだ。やり過ぎってくらいの多機能だが全部が元々のガスマスクには無かった機能だから替えのフィルターも合わせてかなりお安く手に入れられたのはデカい。だから店から出た後に適当なベンチに座り、買ったガスマスクを取り出してマジマジと付属の取扱説明書と見比べながら俺の顔に合わせて調整していた。
(…なるほど、救難信号はバッテリーの関係で一定周期の感覚で放たれて3日間はそれが持続する。中々いいじゃないか)
ダンジョンでは電話もネットも使える、故に配信者達がこぞってダンジョンの中で生配信をする。そんな命を賭けてダンジョンへ挑む人の為に救難信号を受け取ると助けに行く環境も生まれた。故にガスマスクやスマートウォッチなどに救難信号を出す仕掛けも普及した。
(生存の可能性が少しでも上がるのは助かるからな、こういうのはいくらあっても助かるよ)
俺はそう思いながら最後に顔に当てて長さを調節していた…その時だ。
グラッ
「…?(…なんだ、今揺れたよな?…地震か?)」
一回だけ、建物全体が揺れた感覚がした。周りを見ても他の人達が何やらザワザワし出したので多分揺れたのは間違いない。
(…何だ、嫌な予感がする)
俺はそう思いながら無意識にガスマスクのフィルターに封を開けてマスクに装着し、替えのフィルターが入ったエコバックを胸に抱えた…次の瞬間、視界に映る全てが歪んで見え始めた。
(まさか…!?)
俺は最悪の状況に困惑しつつ、そのまま意識を失うのだった。
〜数時間後 ??? 〜
意識が徐々にはっきりしてくる、そして今の俺はさっきまで中腰でいた筈なのに今は寝転がっていると理解した。
「…」
俺はゆっくりと目を開ける、そこは先程までいたスーパーではない、テナントの店もお客さんの姿も無い。
「…(ああ、やっぱりか…こりゃ大惨事だ)」
あるのは大量に咲く白い花の花畑、ただ…天気は曇り、花畑以外の場所は岩だらけの荒野が広がっていた。
そう、俺は理解してしまった。あの振動の後のあの現象…それは間違いないなく建物全体がダンジョンに取り込まれて、強制的にダンジョンに放り込まれたという事だ。
「…(…取り敢えず諸々の問題は今はいい。今は何時だ?)」
俺はゆっくりと体を起こし、腕に付けたスマートウォッチを確認する。フィルターはダンジョンで使える専用の大量生産品だが18時間毎に交換する消耗品。替えのフィルターがあるとはいえ気絶していた時間と気絶する前までに覚えていた時間を照らし合わせて逆算しないと残りの時間次第ではすぐに交換しないと…って、は?
(…9時58分!?確か俺が覚えている時間は19時57分…約14時間も寝ていたのかよ…!?)
次の更新予定
サイレント・フレーム〜色々あって声が出ませんが喋りたいので頑張ってみます〜 @katuonotatakpe
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。サイレント・フレーム〜色々あって声が出ませんが喋りたいので頑張ってみます〜の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます