第2話 Flame

ダンジョンにいるモンスターはデカい。最小と言われているゴブリンやスライムでさえ身長は大体4メートルが基本だ。それにダンジョン自体も馬鹿でかい、しかも銃火器はおろか車などの乗り物も使えないら

それ故に人はドローンなどの無人偵察機でダンジョン内部を確認して地図を作成つつ安全を確保する。

だが、そんなダンジョンのモンスターに唯一対抗できる物がある。それがダンジョンで度々発見される『Flame』と呼ばれている一人乗りのロボットだ。二脚だったりタンクだったり狼型だったり球体だったりとFlameの種類は多種多様、しかもFlameに専用の武器を開発して装置すれば銃火器以外なら使えるのが発覚し、今ではダンジョンから出土するFlame専用装備や外装の他に各種企業が専用装備等を開発している。

そんなFlameだが、一度機体に乗るとその機体はその人の専用機となってしまう。更に個性のように各機体毎に特殊な能力を持ち、当たり外れもあるからかなり扱いが統一できないから訓練しずらいという欠点もあるが…最大の欠点はFlameに乗るには高い適性がいる点だ。

Flameのコックピットは共通で人間で言うと心臓部の位置にあり、Flameに乗る人はそこで機体を操作する。だが、その際の起動シークレンスにおいて適性が無いと…最悪は脳にダメージを負って脳死する。しかもFlameは障害者にはほぼ扱えない、何故か障害者だけ共通でFlameの適性が無いのだ。

それ故に全世界である程度の年齢になると受けられる義務検は障害者だけ免除され、障害者が検査する場合は保険が使える有料の検査を受けなければならない。


(ま、俺には関係ないか。確かFlameの起動時にはでの起動が必須だったはず、声が出せない時点でもうアウトだよ)


一部を除き、Flameは必ず使う際に音声で機体名を叫ぶ必要がある。それも相まって俺にはダンジョンもFlameも縁遠い話だった。



〜 放課後 〜



突然だが俺と家族の中はいい両親に二人の姉と俺の5人家族だ。Flame専用の装備を作る会社に勤務する両親に姉妹でダンジョンで活躍する姉二人…だが、一般的にはその4だと認知されている。末弟であり障害者の俺は大抵の親戚からもいない人扱いをされている。近所の人はおろか故に高校の進学を機に一人暮らしを始めた、幸い喋れなくても部屋を借りれるマンションはあったからそこに両親の仕送りと姉さん達からのお小遣い、そして手術失敗による慰謝料を使って引っ越しをして早2年。今じゃ近所から完璧な家族にたかるゴミだと陰口を言う実家の近所の人や姉らのファンとか言って家凸してくるバカの恐怖を感じずに済むからむしろ安心して暮らせている。

だが、そんな家に帰ってきて…俺は絶望した。


(やば、冷蔵庫空っぽだったの忘れていたよ…)


自宅の冷蔵庫を開けて、食料品が殆ど無いのに気がついたからだ。下手に出前やUberなんて頼めば声が出せない分配達の人に負担をかける事になる。故に基本的には自炊でなんとかしていたのに…昨日の夕飯時に食材の余りを使ってチャーハンを作ったからか冷蔵庫には白玉うどんと各種調味料しかない。


(…しゃーない、悔やんでも意味が無い。今から買いに行く…あ、外食って手もあるな)


幸い喉は声が出せないだけで飲み食いは普通にできる。それに明日も学校だ、下手に家事で体力は使いたく無い。俺はそう考えてから冷蔵庫を閉めて学生服から私服に着替え、エコバッグと財布とスマホを持ってワイヤレスヘッドフォンを装置し起動、スマートウォッチを手につけてから家を出た。今は17時45分、今ならまだチェーン店なら空きの席があるはず。そう願いながら俺はスマホからお気に入りの曲を適当に選んで流しつつ夕飯を何にするか考え、歩きだしたのだった。

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