サイレント・フレーム〜色々あって声が出ませんが喋りたいので頑張ってみます〜

@katuonotatakpe

プロローグ

第1話 声が出ません

人は生まれつき平等ではない。

ある人は足が早い、それ故に陸上などで活躍できる。

ある人はピアノが上手く弾ける、それ故に練習すればコンクールで入賞できる。

ある人は歌うのが上手い、それ故にスカウトされてアイドルになれる。

人は生まれつき何かしらの才能や外見的特徴に違いがでる。それ故に人生は面白いと人達は口を揃えて言うのだが…そんな人達の影には逆に生まれつき奪われた人達もいる。


「…」


生まれつき手がない人、生まれつき足がない人、目や鼻、はたまた脳の一部が無い人もいる。そんな人達の中にいる一人が…俺だ。


「あの…音無くん。これ先生から君にって…」


【ありがとうございます】


「え、あ…うん」



俺の名前は『天音あまね 音無おとなし』。生まれつき声帯の異常により呼吸困難になった、だから緊急手術をしたのだが…結果的に手術は失敗。息はできるが声帯は完全に治療不可、声が2度と出せなくなり喉に痛々しい手術跡が生々しく残ってしまった。それ故に普段からスマホなどに入れた自動読み上げソフトによる会話で何とか生活している障害者だ。それ故に中学卒業後に特別支援学校に入学した今年で高校2年生だ。金銭的には手術失敗による病院側からの慰謝料諸々があるから余裕はある、だが声が出せないのは身体障害者扱いらしく入学できる学校を探すのに難儀した、だがこの支援学校ならきちんと高校の卒業資格がでるので無事に学生生活をこなして卒業すれば社会人として働く事になるだろう。ただ…


(…ああ、やっぱりダメか。手短に本屋でプログラマーの本とか買って勉強しようかな?)


クラスの女子からもらったプリントを見た俺は落胆した。

正直にいうと声を出せないのは喋れないのと同意、喋れないのと言うのは会話ができないのと同じ。つまりは人とコミュニケーションが取れない、例え普段から自動読み上げソフトで会話をしてようがそのデメリットは余りにもデカい。

それ故に今手の中にあるプリントには人と会話をしなくでもいい仕事、もしくは会話を余りしない仕事がリストアップされていた。ただ…やはりと言うかどれもこれもが普通に専門学校に行き知識を学ばないとなれない職がズラリと並んでいた。


(頭に異常なし、普通に勉強はできるし手先は器用、炊事洗濯もできる…でも、やっぱり喋れないとダメか…)


これほど喋れないと言うだけで不自由な事はない。五体満足だから力仕事もできる、パソコンも家事も料理だってできる。だが、やはり〈喋れない=コミュニケーションがとれない〉というデメリットがデカ過ぎる。


(…ま、しょうがない。人生は諦めが肝心だ、大人しくプログラム言語の勉強から初めてみるか)


俺はどう足掻いても喋れない、だからもう諦めている。割り切らないといつまでもダラダラと引きずってしまうんだ、ならばいっそ綺麗に諦めてしまえば気持ちも…


「…なあなあ、あの噂って本当なのかな?」


「何々、何の噂?」


「…?」


そう考えていたら不意にクラスの誰かの会話が聞こえてきた。普段の俺なら気にする必要も無かった、だがその話がどうしても耳に入ってしまう。


「ほら、あれだよあれ。『ダンジョンを攻略したら、その度に願い事を一つ叶えてくれる』ってやつ」


「あ〜…デマじゃね?流石に無理あるわそれ」


「…」(ダンジョン…か…)


『ダンジョン』、いつその存在が現れたのかは定かではない。それにダンジョンはある日突然その場所の全てをある程度飲み込んで現れる。

だがそのダンジョンにはいまだに金銀財宝やレアメタルなどの鉱脈、材木や石材や石油まで取れる。まさに一攫千金の場所だ。だが、その分危険もあり『モンスター』と呼ばれる生き物により常に命を狙われる。更に厄介なのがダンジョン内では銃火器は使えないし…何より全てのダンジョンは必ず人間だけに有効な有毒ガスに満ちていて普通なら10分で死に至る場所。それ故に万が一にダンジョンへ閉じ込められた場合ガスマスクを常に持ち歩くのが日常になった。だが、そんなダンジョンでも一攫千金を目当てに、また配信や調査の為に行く人も沢山いる。だってダンジョンにはある種の『夢』がある。それは…


「はぁ…せっかくだし検査を受けてみようかな?『Flame』に乗ってみたいし♪」


「バカかお前?Flameは高い適性が無いと乗れないんだぞ?しかも俺達は障害者は特に適性が無いんだから金の無駄だって!」


『Flame』というダンジョンで見つかる7メートル位の巨大ロボットに乗れる事だ。

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