1-3
帝国の
「ミッシェル殿下、大変
剣一本にその
「殿下には剣の才能がおありです」
「ありがとう。
ミッシェルは
「殿下。よろしければ先ほどの
「悪いが、この後は大事な用があるのだ」
ミッシェルは「また明日もよろしく
騎士団長は感じ入ったように
「ミッシェル殿下は
同じ頃。帝国の頭脳と
「ラファエル殿下、大変見事な成績でした」
ひたすら学問の道だけに打ち込んできた官吏は
「殿下は実にご
「ありがとうございます。先生の指導のおかげです」
ラファエルは
「殿下。よろしければ先ほどの問題について
「申し訳ありません。この後は大事な用があるのです」
ラファエルは「また明日もお願いします」と告げて去っていく。
官吏は
「ラファエル殿下は
「兄上!」
「ラファエル!」
「兄上もアンジェラの部屋へ行かれるのですか?」
「もちろんだ。アンジェラがはいはいを始めたというのでな。一刻も早く見なければ!」
「はい、兄上。急ぎましょう!」
二人の皇子の「大事な用」とは、可愛い妹のはいはいする姿を見ることだった。
大げさではない。これ以上大事な用などないと言っても過言ではない。
二人が直行した部屋は、帝国
「アンジェラ! 会いに来たぞ!」
ミッシェルが満面の笑みで妹を抱きしめようとした
「ミッシェル!
制したのは皇后ジョゼフィーヌ。母に
(あーあ、
ミッシェルはれっきとした帝国の皇太子。平民とは立場が
(皇太子らしく威厳を保て、とお母様はおっしゃりたいのよね。当然だわ)
アンジェラが
「アンジェラを
「はい、母上。承知しました」
(そっち!?)
品位とか沽券とかではなかった。ただの清潔にしろという指導だった。
「ラファエル、あなたもです。不潔な手でアンジェラに
「心得ました、母上」
ラファエルも
(お母様……強い……!)
二人の皇子は言われた通り手を洗ってから、改めてアンジェラの元にやって来た。
「アンジェラ、はいはいをしたそうですね。私にも見せてください」
「ラファエル兄上、ぼくもう見ました! すっごくかわいかったよ!」
「よかったな、ガブリエル!」
ラファエルが優しくアンジェラに話しかけ、ガブリエルが得意げに手をあげ、ミッシェルがそんな弟の頭を撫でる。
(はい、お兄様たち! 見ててくださいね)
期待されていると知って、アンジェラの胸にやる気がみなぎった。
(うぅっ……足が重い……)
赤ちゃんの体は相変わらず思うように動かない。アンジェラは
よろよろ。ふらふら。ぺしゃっ。
最後の「ぺしゃっ」はアンジェラが
二歩、三歩と進んだだけでもう
「上手だぞ、アンジェラ!」
ミッシェルが絶賛しながらアンジェラを抱きしめる。ラファエルの手へ、ガブリエルの手へと、三人の兄たちにかわるがわる抱っこされながら、アンジェラはひとまず無事にはいはいを
「今日は冷えるわね……」
母のジョセフィーヌが呟いた。
「
「かしこまりました」
部屋の
「アンジェラ、寒くないか? 暖まりに行こう」
はいはいに
「ほら、暖かいだろう?」
(……暖か……い……?)
アンジェラの未熟な視力でも、はっきりと映し出すことのできる赤い色。
見開いた紫の瞳を
次の刹那。大きな泣き声が響きわたった。それが自分の泣き声だとわかるまで、アンジェラ自身さえも数秒を
「アンジェラ!?」
ミッシェルが驚いているが、泣き声は止まらない。
異常なほど強い
(いやーっ!)
「皇女殿下? どうなさいましたか?」
侍女たちが
(
火が上がる。炎が爆ぜる。煙が立ち込める。
怖い。体がすくむ。動けない。息ができない。
(怖い……怖いよぉ……!)
燃えさかる炎におびえて、アンジェラは震えながら固く目をつぶった。
「すまない、アンジェラ。暖炉が怖かったか?」
ミッシェルは察してくれたのか、アンジェラを連れて暖炉から
「アンジェラがこんなに泣くのは初めて見ましたね」
「アンジェラ。怖がらなくても大丈夫だよ」
ラファエルとガブリエルがアンジェラをよしよしと撫でる。
三人の兄に
(もしかして……前世の私の死因が火だったせい? だからこんなに怖いと感じるの?)
前世でジゼルは死罪を命じられ、
ジゼルの命を
(どうしよう。現世の私、火が苦手……!)
思わぬ弱点が判明して、震えるアンジェラだった。
次の更新予定
処刑された聖女ですが、皇女に転生してお兄様たちに溺愛されています 朝森さな/ビーズログ文庫 @bslog
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