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*****
ミリアは医務室で一晩過ごすと、朝にはジルベスターの手配により、貴族や
部屋の豪華さよりも、外から鍵をかけられないことがミリアは
最初は出される食事が豪華過ぎて口に合わずに苦労したが、量を減らして味付けも
手紙を出したい
そして、外出も許可された。宿の施設内ならどこでも自由に行ってよく、レストランやカフェを利用しても全てジルベスターの妻として割り当てられる予算で
他にも、食事や
今はまだカフェを利用したり、宿の庭園を散歩する程度だが、気持ちが前向きになったことで、ヴェルサス辺境領とはどんな
ミリアが高級宿へ居を移してから数日が経過した
「ここの
従業員が退室して三人だけになるとジルベスターが
「おかげ様で快適に過ごしています。ご配慮いただきありがとうございます」
ミリアが
「今日はことの
「はい」
ジルベスターの調べたところによると、ミリアが不当な扱いを受けていたのはヘンドリックスとハンナがジルベスターを異常と言っていいほど
元々二人は階級意識が強く、ジルベスターの
他にもジルベスターを心酔する者は多く、彼らもヘンドリックスやハンナに感化され協力していたからこそ、ジルベスターの知らないところでこのような悲劇が起きることになったそうだ。
「私も気が付かず申し訳なかった」
そう言ってジルベスターは
「あの人たちに適切な
「もちろんだ。関わった者全員を
「そうですか」
──一応
「不満そうだな。だが未来の出世が
ミリアの感覚では職場は他の街で探し直せばいいし、登城禁止になっても城へ行かなければいいだけなので、どうしても軽い処分としか思えない。
「それから、ミリアの住む場所はこの宿を二年
「やります! やらせて下さい! あと、お給料もきちんと下さい!」
ミリアは思わず身を乗り出していた。これで
「ふっ、君は血筋も身分も伯爵令嬢で
そう言ってジルベスターは笑い、
「今後、私に何か要望や伝えたいことがある時は彼を
「改めて名乗らせていただきます。私はジルベスター様の側近の一人、クリス・ブラウンと申します。先日、貴女の治癒魔法で救われた一人です」
クリスはミリアに
「そうでしたか」
あの晩のことを思い出そうとしてもクリスの顔に覚えがない。ミリアは患者の顔を覚えるのが得意なはずなのだが全く覚えていなかった。それほどまでにあの時のミリアは精神的に追い詰められていた。
「ミリア様に助けていただき感謝致します。正直、あの時は死を
「いえ、閣下のご指示ですから」
ミリアはつい、素っ気ない態度で答えていた。ヘンドリックスとクリスが別人であるのは分かっているが、どうしても城の人間を信用できなくなっていた。
「どうかそんなに警戒しないで下さい。私はヘンドリックスさんと違って閣下至上主義ではありませんから。あ、でも忠誠は
そう言ってクリスはジルベスターに向かってヘラリと笑って見せ、それを見たジルベスターは少し
「実は私もミリア様と同じ庶子の生まれなのです。それもあって私がミリア様のお世話係を任されました」
「そうですか」
庶子と言ってもつい最近まで市井で暮らしていたミリアとは違う。
監禁されている間ミリアは本を読むしかなく、そこでヴェルサス辺境領の歴史にまつわる本をいくつか読んでいた。その中でブラウン伯爵家は古くからこの領地で活躍した名家であると
「ところでミリア、この領がどんなところか興味はないか」
「ええ、まあ見てみたいとは……」
「お
そろそろ外に出てみたいという思いはあったのでジルベスターの申し出は
「でも、お忙しいでしょうから」
「構わない。私もたまには
「あ、ありがとうございます。では宜しくお願いします」
きっと貴族の令嬢が喜びそうな場所に連れて行かれるのだろうな、と思いながら特に断る理由も見つからずミリアは頭を下げた。
「閣下、私にも息抜きさせて下さい」
口を
「お前は先日まで休んでいただろう」
「それは負傷していたからです!!」
「そうだったかな」
*****
二日後の朝、クリスが馬車でミリアを迎えに来た。
ヴェルサス領軍の軍医隊で働くことになったミリアを案内するためだ。移動中の馬車の中で、クリスはミリアに注意
一つ、ミリアとジルベスターとの婚姻は期間限定のため
一つ、ミリアは伯爵令嬢ではあるが、本来貴族の令嬢が治癒士として働くことはあり得ないので、平民と身分を
一つ、ミリアはクリスの母方の
「最後に、『どんなに見目のよい
「……」
最後の伝言が想定外過ぎて、ミリアは思わず頰を赤らめる。ジルベスターとしては、契約
ヴェルサス領軍の施設は領主城の西側にあり、軍務棟、訓練場、宿舎、武器倉庫などが建ち並ぶ。その中でも軍務棟の一角にある医務室でミリアは勤務することとなった。
クリスに
「ジェイド先生、新しい治癒士を連れて来ました」
「やあ、クリス君待っていたよ。おや、君は……四人立て続けに解毒した子だね」
「あ、あの時の……」
「そう言えば二人は面識がありましたね」
その医師は、ジルベスターたちが
「私はジェイド・パーカー、ここで軍医をしている。君の実力はすでに保証済みだね。あの晩は魔力を使い過ぎて大変だったんじゃないのか?」
ジェイドの言う通り、普通の治癒士なら数日間動けなくなっていただろう。しかしミリアは貴族並みに魔力量が多い。平民の治癒士としてここで勤務する以上、その事実は知られない方がいい。魔力には全く問題なかったが、ここは話を合わせることにした。
「ミリアと申します。翌日は動けなくてほとんど
ただの寝不足が原因だったのだが、半分は本当なのでそれらしいことを言って
「私は軍医隊所属の治癒士でニコルっていうの。私は魔力がとても少なくて、治せる病気や怪我の種類がほとんどないの。だからミリアさんが来てくれてとても嬉しいわ」
そう言って自己紹介したニコルは赤毛のお
「ニコルさん宜しくね。私は逆に騎士様や兵士相手の治癒はあまり経験がないの。色々と教えてもらえると嬉しいわ」
「ええ! 私でよかったら! 私のことはニコルって呼んで」
「では、私のことはミリアと」
ミリアとニコルは微笑み合った。
ここだったら
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貴族になんかなりたくない 治癒士の私が契約結婚した辺境伯閣下と本当の恋に落ちるまで 斉藤加奈子/ビーズログ文庫 @bslog
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