第三章
3-1
ミリアはヘンドリックスと共に
「ハンナ、この者が例の
「この人がミリアね」
ハンナと呼ばれた女性は、
「そうだ、後は
ヘンドリックスはハンナにミリアを
「ミリア、部屋へ案内します。付いてきなさい」
ハンナは代々ヴェルサス家に仕える
それなのに目の前に居るジルベスターの妻になった女性は、元は平民で
ミリアとハンナは一度城を出て、屋外の通路をしばらく歩く。すると赤いレンガの建物へ
「ここが
「あ、あのっ!」
「何か?」
「外出はできないのですか」
「護衛のための人手も足りないので難しいです。それでは失礼します」
ハンナはそっけなく断り、速やかに部屋を出ると、バタンと
──閉じ込められた!?
ガチャガチャと扉を押したり引いたりしてみるが全く開かない。
──
「ハンナさん待って! 鍵を開けて!」
扉には目の高さに顔より小さな窓がついており、開けて向こう側を
閉じ込められた部屋は広く、
しかし今はまだ昼前だというのにこの部屋は
ミリアは少ない荷物の
──私、
ジルベスターは
「ドリトン先生……奥様……」
王都で
──せめて手紙でも書こう。
部屋の書き物机の引き出しを開けると、そこにはレターセットと筆記具が入っていた。ミリアはそれらを取り出しペンを取る。
ジルベスターの名前は
夜になると、ただでさえ静かな部屋がより静けさを増して
「失礼します。お食事です」
やって来たのは
メイドはミリアを見ることなくツカツカと部屋へ入るとダイニングテーブルへそれを置き、すぐさま去ろうとする。
「あの」
「はい?」
メイドは
「王都へ手紙を出して欲しいのですけど……」
「……分かりました。ハンナ様に聞いてみます。お返事は食器をお下げする時で
「ええ、
「では、失礼します」
そう言って少しだけ頭を下げてメイドは部屋を出て行った。
どうやらミリアは平民であろう
「何……これ……」
ミリアに出された食事は、パサパサに
──部屋は立派だけどこれじゃ
か悪いことをしたとでも言うのかしら。
残り物のような食事を終えてしばらくすると、先ほどのメイドが食器を下げに来た。
「ミリア様、手紙の件ですが、外部との連絡は
「な! どうして、家族に手紙を出すことも許されないの!」
「私は言われたことを伝えただけですので」
「そんな……」
確かにこのメイドに文句を言ったところでどうしようもない。しかし離れた家族に便りを出したい気持ちはハンナにも理解できるはずだ。それさえも許されないのはどういうことなのか。
「閣下に会わせて下さい。閣下は要望があれば
こうなったら直接ジルベスターに
「私では何とも……。お
そう言ってメイドは食べ終わった食器を手に、足早に部屋を出て行った。
ミリアが閉じ込められて一週間が
「閣下に取り次げと
「ヘンドリックスさん、私をこんな部屋に閉じ込めてどういうつもりですか」
「何を言っている。貴様にはもったいないくらいの立派な部屋じゃないか。
「もう逃げたりしないわ! 閣下に話したいことがあるの。閣下に会わせて下さい!」
「五月蠅い、いい加減にしろ! 貴様のような女に閣下を会わせるはずがないだろう。
バタンと強く扉を閉め、ヘンドリックスは出て行ってしまった。
ミリアはジルベスターにこの
二週間が過ぎると時間や日にちの感覚がおかしくなっていた。今日は何日で、今は何時なのか。部屋に時計がないせいもあるが、食事が運ばれてくることでおおよその時刻が判断できている状態だった。
次第に精神的に追い詰められていったミリアは、自分が一体何のために生きているのか、生きている意味はあるのか。それすら分からなくなってしまっていた。
そんな日々を一カ月ほど過ごしたある深夜のこと。
夜の
「治癒士! 起きろ!」
ヘンドリックスとは
ベッドで本を読んでいたミリアはのそりとベッドから出ると扉の
「何事ですか」
ミリアが声をかけると扉の小窓がパカリと開かれ、それを覗く男はミリアに
「閣下が
敵国のフランベルデ
「……分かりました」
無感情にミリアは答えると、とりあえず
「急げ、もたもたするな!」
案内されて城内の医務室へ向かう
そんな思考に
医務室では四人の負傷者がベッドに横たわっていて、その中にはヘンドリックスも居た。四人は共通して矢傷を負い、苦しそうに
──これは、毒?
医務室に居た医師らしき
「治癒士の方ですか」
処置に当たっていた医師がミリアに気付き声をかけた。
「……はい」
「見たところ、彼らは毒に当てられています。
「食中毒でしたら……」
「それならできるかもしれませんね。
「……やってみます」
毒に対する処置は、医師の場合、薬師と相談して毒の特定から始めなければならない。それでは時間がかかり過ぎるため
ミリアは手を組み合わせ
「ほう……」
医師が
確かな手応えを感じたミリアは次々と治癒魔法をかけていき、気が付けばヘンドリックスを
四人の負傷者は他にも切り傷などを負っているが、重傷というほどではないだろうと判断し、ミリアは「後はお任せします」と言い残し部屋へ帰っていった。
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