2-2
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始めからミリアを連れ帰るつもりだったのか、ヘンドリックスが領地へ帰るのと
「道中の安全を
「
ジェルマンとヘンドリックスが別れの言葉を
「ミリア様、お
ロジーナは
トマソンやジェルマンは
伯爵家の令嬢なら持参金、ドレスに
「ロジーナさん、ありがとう」
ここで
「貴族社会では礼儀作法をしっかり守ることが重要です。教えたことを忘れず――」
「おい、いつまでしゃべっている。早く乗りなさい」
ロジーナはミリアが心配でならなかった。伝えたいことはたくさんあったが、ヘンドリックスに
ミリアはロジーナとの別れの挨拶もまともにさせてもらえないまま、
ゴトゴトと
馬車はまだ王都を走っている。目の前に座るこのヘンドリックスという男は、時折ミリアに対して
逃げ出すのなら今のうちだ。王都から出たことのないミリアが
もう、今まで通りブルックナー診療所で働き続けることは不可能だろう。それならばせめてお別れの挨拶と、母親の遺品、そしていくつかの貴重品だけでも持ち出して、どこかで名前を変えて治癒士をして生きていこう。馬車がスピードを落としたところでこのトランクをクッションにして飛び降りればいい。
ミリアはそう覚悟して、ぎゅっとトランクを
再び走り出した馬車。
ミリアの髪は乱れ、ワンピースの
そう、ミリアは脱走に失敗した。
この男が
おかげで今は警戒を強められ、全く
「貴様のような平民が、閣下の
ミリアの目の前の男は
ヘンドリックスはグスターク
彼は十六歳の頃、今のヴェルサス辺境伯であるジルベスターが、十二歳で次期領主としての公務を始めた頃から側近として仕えている。ジルベスターが前領主からその地位を
性格は
それに反してミリアは
ヘンドリックスとしては到底許しがたい主君の婚姻相手である。
「閣下?」
先ほどヘンドリックスが言った言葉を、ミリアは思わず聞き返す。『閣下』とは高い身分にある人を呼ぶ
しかし自分の結婚相手がどういう人なのかまでは知らない。『ジルベスター・ヴェルサス』という名前なのはサインした婚姻届で知ったが、ヴェルサス辺境領に住む人という
「貴様は結婚した相手の名も知らないと言うのか!」
「先ほどサインした婚姻届で知りました。確か『ジルベスター・ヴェルサス』様だとか……」
「いいか、貴様よく聞け! ジルベスター様はな! 本来貴様なんぞがお目にかかれるようなお人ではないのだ! あの方は
――え?
ミリアは耳を疑った。
――領主様であり王様の
ミリアは自分の結婚した相手がこのアドリアス王国の王族に当たる人物だと知り、頭の中が真っ白になった。
それからミリアは脱走することは止めた。ヘンドリックスの監視の目をかいくぐることができなかったのもあるが、自分の結婚相手が王族だと知り、そんな相手を敵に回したところでどうにもならないと思ったからだ。
馬車を降りると、ヘンドリックスは付いてこいとだけ告げて足早に歩き出し、城の中へと入っていく。ミリアは仕方なく彼の後を付いていった。
そこは領主の
陽光を纏ったような明るい
―― 彼がジルベスター・ヴェルサス様。こんな人が世の中に居るなんて。
ミリアは自分の夫となる人物の美しい容姿に目を
「閣下、ただいま戻りました。この者がミリアです」
「ご苦労であった」
「おいっ、挨拶をしろっ」
「お、お初にお目にかかります。ミリアと申します」
ヘンドリックスに促されてミリアは覚えたてのカーテシーを
「遠くからよく来てくれた。私が領主のジルベスター・ヴェルサスだ」
思いの外、
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