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訪問診療は、貸し馬車を使って患者の家を回る。まず向かうのは貴族街にあるイースター
いつものようにドリトンが
「膝も治癒を頼めんか。最近階段が
ミリアはチラリとドリトンを見る。ドリトンがこくりと
「そこの治癒士の娘、話があるのだがお茶でも飲んでいかんかの」
ギクリとミリアの動きが止まる。そしてミリアが返事をする前にドリトンが口を開いた。
「失礼ながらイースター
「う、うむ、それは大事じゃな。お茶はまた時間がある時にでも来るがいい」
「ご
一礼してドリトンとミリアは足早に子爵家を去った。
貴族の屋敷を訪問中、ミリアが声を出すのは必要最低限であり、貴族との会話はほとんどドリトンが対応する。こういう誘いを受けた時、ミリアでは断れないからだ。
ドリトンが侯爵家へ用事があると言ったのは、
侯爵家へ
「先生、助けてくれてありがとう」
馬車へ乗り込むと同時にミリアはドリトンへ礼を言う。
「なに、大事なミリアを取られては
「私ずっと先生とこうして働いていきたいな」
これはミリアの本心だった。恩人であり、親であり、恩師でもあるドリトンとその妻タニアとずっと一緒に居られたら。それだけでミリアは幸せだと思った。しかしドリトンとタニアは高齢でいつまでも一緒に居られる訳ではなく、いつかは独立も考えなくてはいけないのだろう。
「何を言うか。イケメンの医師と結婚して診療所を開くと言っておったではないか」
「そう! 先生と奥様みたいな
「調子がいいことを言いおって……。ミリアが
――
ミリアは鼻の奥がツンとして泣きそうになる。ミリアが今まで生きてこられたのはドリトンとタニアのおかげだ。いつか二人に恩返しがしたいと思った。
「お嫁に行けなかったら私が先生と奥様の面倒を見てあげるからね!」
そう言って泣きそうになるのをミリアは
*****
ドリトンとミリアが次の訪問先へと向かう後ろ姿を、屋敷の窓から見送る四人の男が居た。一人は先ほどまでミリアが治癒魔法をかけていた老人で、もう一人は地位が高く見た目の美しい若い男。そして残りの二人は若い男の従者だった。
「閣下、あの娘がミリアという治癒士です。若いがなかなかの腕の持ち主でしてな、我が子爵家は使用人も
そう老人が説明すると、閣下と呼ばれた若い男は僅かに口元を緩ませた。
「なるほど、聞いていた通りのようだ。ところで彼女がどのような女性かご存じで?」
「
「そうですか」
ミリアの性格がよさそうであることを聞いて、若い男はいっそう口元を緩めた。
「なんだ、あの不格好なメガネは。女のくせにもう少し見た目に気を
彼の従者の一人が、ミリアの容姿が気に食わないらしく悪態をついた。
「女性に対して失礼な言動は
ミリアの確かな腕前と、評判のよさを気に入った若い男が
「彼女だったら大丈夫ですよ、メガネを外してお
主人に対して気安い言葉をかけたのはもう一人の従者だった。
この三人は、ミリアが治癒魔法をかける様子や、実際に
ミリアの能力と
「二人とも、例の話を進めてくれ。くれぐれも彼女に無礼のないよう、十分な待遇を用意するように」
「「承知致しました」」
「イースター卿、ご協力いただき感謝する」
「なんの、
若い男は老人に礼を言うと、従者を連れてイースター子爵家を去っていった。
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