第2話 ステータス画面の異変

 スライムから逃げ切ったミナは、草原の端にある小さな森にたどり着いていた。

 木々に囲まれると少しだけ安心できる。少なくとも、さっきのぷるぷるした青い敵はいない。


「はぁ……ほんとにゲームみたいな世界だなぁ」


 独り言をつぶやきながら、ミナはもう一度ステータス画面を開いた。


【ステータス】

名前:ミナ

レベル:1

HP:10

MP:5

攻撃力:1

防御力:1

敏捷:1

スキル:なし


「やっぱり変わってない……」


 何かもらえると思っていたわけではないが、ここまで何もないと逆に清々しい。

 ミナはため息をつき、画面を閉じようとした――その瞬間。


 画面が、明確におかしくなった。


 文字が震え、数字が滲み、まるで裏側から何かが浮き出ようとしているように歪む。


「え、ちょ、なにこれ……?」


 一瞬だけ、攻撃力の「1」の横に、別の表示が重なった。


【攻撃力:1(――――)】


 括弧の中は読めない。

 ただ、数字が高速で変化しているのだけは分かった。


 0、10、100、1000……そして、見慣れない記号。


「……バグ?」


 次の瞬間、画面は何事もなかったかのように元に戻った。


【攻撃力:1】


「……今の、絶対見間違いじゃないよね」


 心臓が少しだけ早くなる。

 ゲームなら、明らかに不具合だ。


「でも……どうせ私には関係ないか」


 ミナは首を振った。

 今の自分はレベル1の初心者。考えたところで、強くなるわけでもない。


 そう思って立ち上がった、その足元。


 落ちていた小石を、何気なく蹴った。


 ――ズドン。


「え?」


 小石は信じられない速度で飛び、遠くの木の幹を粉砕した。

 木は音を立てて倒れ、地面が揺れる。


 ミナは固まった。


「……今の、私?」


 震える手で、再びステータス画面を開く。


【攻撃力:1】


 数字は、何一つ変わっていなかった。

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