第4話 お国のため

シーン1:検閲官の登場

舞台は「契約遵守課」だが、今回は検閲官(シャイロック)が劇場に乗り込むシーンから始まる。

シャイロックは軍服風の制服、手には赤ペンと分厚い「検閲規定集」。

シャイロック

「芝居の台本を見せてください。」

アントニオは慌てて原稿を差し出す。

シャイロック

「……ふむ。『セ』が多いですね。」

アントニオ

「セ?」

シャイロック

「『セリフ』『先生』『戦争』……危険な匂いがします。『セ』は国家を腐らせる。」

(観客笑い)

アントニオ(心の声)

「僕、ただの小屋主なんですけど……なんで『セ』で国家が腐るんだ?」


シーン2:検閲の暴走

シャイロックは台本を読みながら、次々と赤ペンを入れる。

シャイロック

「この『笑う』という言葉、削除。笑いは国家を腐らせる。

この『恋』という言葉、削除。恋は秩序を乱す。

……そして、この『セ』、全部削除。」

アントニオは必死に食い下がる。

アントニオ

「でも、それじゃ芝居になりません!」

シャイロック

「芝居に国家は勝つんです!」

(観客爆笑)


シーン3:条件提示

シャイロックは契約書を机にドン。

シャイロック

「条件はこうです。台本に『お国のため』を3回入れること。

一回じゃダメです。三回です。国家は三を好む。」

アントニオ

「……三回?」

シャイロック

「そうです。『お国のため』を三回言えば、笑いも恋も許しましょう。」

「ついでに融資もさせていただきましょう」


アントニオは観客に向かってモノローグ。

アントニオ(モノローグ)

「僕はただ、静かに芝居を書きたいだけなんです。

でも融資はほしい・・・

なのに今、僕は『お国のため』を三回言わせる脚本家になってる。

……これ、誰が笑うんですか?」

(観客爆笑)

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