第7話

扉の向こうに広がる世界は、時空が歪んだように見えた。過去の風景と未来の光が入り混じり、どこまでも幻想的だった。


柚葉は蓮の手をしっかりと握りしめたまま、目を見つめた。


「この世界…まるで夢みたいだね」彼女は静かに言った。


「きっと、兄貴の願いが叶ったからだ」蓮も穏やかに微笑みながら、「でも、俺たちが本当に知りたいのは、これからだ」と続けた。


その時、遠くの方から声が聞こえた。


「あなたたち…」その声は優しくも少し切なく、空間の中から現れたのは、兄の姿だった。


兄は穏やかな笑顔を浮かべていたが、その目には深い悲しみと優しさが宿っていた。


「兄さん…」柚葉が声を震わせて叫んだ。


「私は…」兄は静かに語り始めた。「この場所は、俺の想いと過去、そして未来への希望が重なり合う場所だ。だけど、それだけじゃなく、失われたものもここにある」


その言葉に、皆が静まり返った。


「兄さん、何を伝えたいの?」と海斗が尋ねる。


兄は深く息を吸い込み、「俺の願いは、ただ一つ。お前たちに幸せを見つけてほしい。そして、本当の意味での“愛”を理解してほしい」と言った。


突然、周囲の風景が変わり、過去の記憶や未来の夢が一つの映像となって流れ出した。


それは、兄が若い頃の姿、自分の夢、そして愛する人との思い出だった。


「俺はずっと、あの人を守りたかった。でも、そのために何もできずに終わった」兄は涙をこらえながら続けた。


柚葉は、そんな兄の心の奥底に触れ、彼女の胸が熱くなった。


「兄さん…私たち、あなたの想いを受け継ぐよ」彼女は静かに誓った。


蓮も真剣な眼差しで、「真実を知ることは、未来を作ることだ。兄さんの願いも、俺たちの願いも、今ここから始まる」と言った。


その瞬間、扉の奥から新たな光が差し込み、未来への道が開かれた。


兄は微笑み、「さあ、行け」と静かに告げた。


柚葉は涙をぬぐいながら、「ありがとう、兄さん。私たち、絶対に幸せを見つけるよ」と言った。


蓮と海斗も頷き、未来への扉をくぐり抜けた。


彼らの歩みは、新たな希望と愛に満ちていた。

扉の向こうに広がった未知の世界から、三人はゆっくりと歩み出した。未来へと続くその道は、光と影が入り混じりながらも、確固たる希望の輝きを放っていた。


柚葉は蓮の腕に寄り添いながら、「これから先には何が待っているのかな?」と問いかけた。


蓮は微笑みながら、「きっと、俺たちの未来を築くための試練が待っている。でも、怖くはない。お前と一緒なら、何だって乗り越えられる」と返した。


その時、遠くの方から突然、叫び声が響いた。


「待て!お前たちを止める!」その声は、険しい表情をした男の声だった。


振り返ると、そこには、かつて兄と戦った敵の姿があった。彼は、闇の中から現れ、不気味な笑みを浮かべている。


「おのれらは、兄の願いを壊すつもりか!」と叫びながら、彼は鋭い剣を振るった。


「危ない!」海斗が叫び、彼らに向かって走った。


「待て、みんな!」柚葉は叫びながら、手にした宝石を光らせ、その力を使って敵の攻撃を防いだ。


「この世界には、まだ解決すべき闇がある」蓮が真剣な表情で言った。「兄さんの願いは、これだけじゃ終わらない。俺たちが守るべき未来は、これからだ」


彼らは協力し、力を合わせて敵と戦った。戦いの中で、柚葉は次第に、心の中に芽生えた恋心と、仲間への絆を深めていった。


戦いが終わると、敵は倒れ、静かな風が吹き抜けた。


「これで終わったのか?」海斗が息を整えながら尋ねた。


蓮は、遠くの空を見つめて、「いいえ、これは始まりに過ぎない。未来には、もっと大きな試練と、愛の試練も待ち受けているはずだ」と静かに語った。


柚葉は、蓮の横顔を見ながら、「私たち、絶対に乗り越えるよ。兄さんの夢と、私たちの未来のために」と誓った。


その夜、星空の下、彼らは新たな希望とともに、未来への一歩を踏み出した。

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秘密の夏恋の予感 ういぎふ @Uygjf

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