2.初心者、二度と初心者ダンジョンに入れない
「なんで一人なんだよ」
「タケルのスキルで……」
満田先生が不審そうな表情で僕を見ている。
いや、僕は被害者だよ?
何を言っても不審そうに見るばかりでしまいにはめんどくさそうである。
とりあえずタケル達が出てくるまで待つしかない。
しかし……タケルのやつ……固有スキル【追放】って言ってたな。
アイツ、効果わかってたはずだろ……
ステータス表示でスキルの効果は見られるから、すぐ見たはずだよな。
効果がわかってて僕にあんなスキルを……
僕は未だスキル無しだし、職業は初心者のままである。
周囲の生徒たちはもちろんクリアした者ばかり。
得られたスキルについての話や、職業をどれにするかの話で盛り上がっている。
「はぁ……やっぱり一人の方が良かった」
結局、僕一人でやり直すことになるんだよね、きっと。
そんな事を考えているとタケル達が戻ってきた。
「まじボス楽勝すぎたな!それより職業なんにするよぉ?」
タケル達は僕の事なんて完全に忘れて職業選びについて盛り上がっている。
「おい、タケル!ちょっとこっちにこい!」
満田先生が大声でタケルを呼びつける。
「なんすかぁ?職業選びしたいんすけどぉ」
悪びれもせず、しぶしぶタケルが来るが態度がすこぶる悪い。
「お前、トオルに何をした?」
「え、ああそうだった!俺、固有スキルだったすぅ!それ使ったら陰キャ消えちゃいましたぁ!」
「何!固有スキルだと!」
満田先生は僕の事を一瞬で忘れて、タケルの固有スキルについて聞き始める。
いや、満田先生、僕の話は?
呆れながらも横で二人の話を聞く。
どうやらタケルの固有スキル【追放】はパーティメンバーをダンジョンから脱出させるものらしい(その効果で名前が追放って)
自分自身にも使えるスキルらしく、緊急脱出時や階層が深いダンジョンでの帰還にかなり有用だと盛り上がっている。
それはそうと、すっかり忘れられた僕は満田先生に声をかける。
「満田先生……僕はどうすれば……」
「ん?ああ、トオルはもう一度ダンジョンに入ってこい、固有スキル効果じゃ仕方ないだろう」
タケルは何のお咎めもなくむしろちやほやされている。
何故かって……固有スキルは発現率が低い。
しかも有用なタケルのスキルに満田先生は興奮している。
「はぁ……」
満田先生にすら冷たく扱われた僕は釈然としないまま、初心者ダンジョン入り口に向かう。
くそぉ、僕がすごい固有スキルだったら……覚えてろよ!
そんな事を夢想しながら、初心者ダンジョン入り口の石碑に触れる。
「え」
何も起きない。
そんな馬鹿な……
何度触れても何も起きない。
「一度クリアしたらもう入れないよ?」
僕がうんともすんともいわない石碑を睨みつけていると見知らぬ美少女が声をかけてきた。
「いや……僕、クリアしてないんだけどな……」
困惑しながら僕は答える。
「え?クリアしてないのにどうやって出てきたの?」
驚いた表情で美少女がこちらを見ている、可愛い。
「アイツの……阿久津タケルの固有スキルでダンジョンから追い出されて……」
「ええ?クリアしてないのに?……えっとスキルと職業は?」
「スキルは無いし、職業は初心者のまま……」
「それ……かなりヤバイよ……初めて聞いた……すぐ先生に言った方がいいよ!」
美少女の切羽詰まった表情を見て僕も焦り始める。
「う、うん……そうするよ、ありがとう」
「ううん、私【黒峰 サクヤ】、困ったことがあったら相談してね?」
「ありがとう……僕は白井トオルだよ」
美少女が心配そうな顔で僕を見つめている。
少し顔に熱を感じながら、満田先生の元へ向かう。
「可愛かったな……」
小声でつぶやく。
真っ白な肌と長い黒髪に整った顔立ち。
すらっとしているのに胸は大きかった……
黒峰さんの姿を思い浮かべながら満田先生の元へ向かう。
満田先生はタケルとスキルの話をまだ話ししている。
「満田先生……僕ダンジョンに入れなくなってて……」
「ん?そうなのか?一度出たからクリア扱いなのかもしれんな?」
軽く受け流された。
いやいや!僕はスキルも無いし職業も選べないんだぞ!
「満田先生……僕スキルも無いし職業も初心者のままなんですが……」
「マジかぁ?陰キャ超ウケる!一生初心者じゃん!オメぇ!」
タケルが汚い笑顔で僕を煽ってくる。
お前のせいだろ……
怒りの表情で満田先生を見ると
「まあ、仕方ないな、諦めろ」
そう満田先生が言った。
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初心者ダンジョンで追放された僕、ダンジョンから追い出されて永遠の初心者になった~スキル無しで転職不可ですが初心者特典が思ったよりすごい 555 @kaku555
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