第2話
そして瞳を閉じたまま立ち上がると、テーブルの上に会った果物ナイフを取り上げ、目の前の一人の喉を深く刺した。
刺された男は声を上げることもなく、血しぶきをあげながら倒れた。
「ぎゃーっ」
「うわーっ」
「なんだなんだ」
狭い寮の部屋は阿鼻叫喚。
その中で男は周りの人間を次々とめった刺しにし、結局その男以外の五人が死んだ。
そしてその男はそのまま姿を消し、それ以来姿を消したという。
そして今も見つかっていない。
そんな噂だ。
――まったく、なあ。
その場にいた五人が死に、殺した男は行方知れず。
にもかかわらずその場の状況が、何があったのかが、細かく語られている。
いったい誰がそれを伝えたというのだ。
よくある語り部が誰もいないはずの怖い都市伝説だ。
おまけに事実と伝えられているが、この日本において一度に五人も殺されたら、それは犯罪史に残る大事件だ。
でもこの寮でこの土地でそんな事件があったなんて、一度も聞いたことがないし、ネットで調べてもまるで出てこない。
――取るに足らない噂か。
そんなわけで、信憑性のない噂となっていた。
それなのになんでそんな噂がこの寮に長年語られ続けているのか、それを誰が言いだしたのかはよくわかっていないが。
寝言に返事をすると、人が死ぬ ツヨシ @kunkunkonkon
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