まっすぐの、まっさらな朝日

長谷川リュネ久臣

おはよう

 雪国育ちの者は

 年に一度も 雪の空気を吸わないと

 身体が元気にならないように思う。


  

 汽車の窓が くもっている。

 雪でぼんやりと白んでいる。


 暗い朝のなか

 眠い人々は うつむいていた。


 眠たいし、暗いし、寒いし、一日は長い。

 

 かくいう私も、うつむいている。


 一日はこれからなのに、お腹がすいている。


 朝ごはんには、今度から

 パンよりご飯を食べた方が良いだろうか。


 自分で自分を成り立たせるのは難しい。

 

 考え込んで 顔をあげると

 人々はうつむいているのだった。






 汽車はまっさらな雪原を一筋に進む。





 人々は 口も聞かず 

 足下のヒーターで 湿った靴を乾かし、

 鼓舞と憐れみの 真ん中を

 ぼんやりと進む。

 

 暗い朝に起きて

 凍えた部屋で服を脱ぎ

 何かしらを食べ

 なんとかここに座って うつむいている。


 空の底に

 白桃色が、広がり始めていた。


 靴の中が 温もってくるにつれ、

 同じリズムで 揺れるにつれ、

 汽車に連なる人々が、

 かわいらしく思えてくる。


 一筋の


 まだ眠たい人々の

 いのちをまるごと

 祝いたくなってくるのだった。


 身体の表面が

 汽車の窓のように ぼやけていく。



 わたしたちは、

 自分で自分を成り立たせている、

 いのちの集まり。



 ほら、日の出だ。


 一緒に夜明けを見よう。


 冬至が近い。

 

 遅い朝日で、影を作ろう。


 新雪になら、影はまっすぐ、伸びるからね。



 

 


 

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まっすぐの、まっさらな朝日 長谷川リュネ久臣 @fuwafuwa_kani

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