不合格ver.
今日は第一志望の高校の合格発表日。この日のためにどれだけ勉強してきたことか…。帰宅後、すぐに塾の自習室へ行き、授業を受け、閉館時間である22時半までこれまた勉強。この生活を始めて約1年。クリスマスの美しいイルミネーションすら目に入れず、正月すらも捧げて、1日も休まずに頑張ってきた。
誰かが言っていた、努力は必ず報われる。周りの人間よりも努力に努力を重ねてきたはずだ。大丈夫、私は受かる。大丈夫、大丈夫…。そう自分に言い聞かせながら、細かく震える手でパソコンを操作し受験番号を入力する。『結果を見る』このボタンを押したら、私のこの努力が実ったのかどうか、すぐに分かってしまう。後ほんのワンクリックで、自身の運命と向き合わなければならない。それがたとえ残酷な運命だったとしても受け入れなくてはならない。
呼吸が荒くなる。手も先程より大きく震える。親にはお願いして自分の部屋には入らないでもらっている。頼れる人はいない。…怖い。やはりどれだけ努力しても、一度きりの受験だ。どっちに転ぶかはわからない。受験の日の記憶は曖昧だ。どんなミスをしているかわからない。いくら模試でA判定が出ていたとしても、神様が微笑んでくれるかはわからない…。
後ワンクリックが進まない。最悪の想像をしてしまう。それでも後ワンクリックを進めないと最高の運命を迎えることもできない。…よし、やろう。マウスを持つ右手の震えを左手で抑える。深呼吸をして落ち着く。目をかっと開く。右手の人差し指に力を入れる。
『不合格』
真っ青な三文字が目に入ってくる。散っていく桜を背景にして、一段と目立って見える。
その三文字の意味はすぐに理解した。でも、信じたくなかった。頭では分かっていても心が受け付けない。体は金縛りにあったように動かず、一粒の涙すらもこぼれない。
そんなはずはない。あれほど頑張ったのに落ちるわけがない。震える手で乾いた目をこすり、もう一度画面を見る。どうか見間違いであってほしい。そう願い何度も何度も見直す。しかし、いつになってもその三文字は変わらない。こんな運命、受け入れたくない。
手がだらりと下に垂れる。頭もカクンと下を向く。先程まで浅く座っていた椅子から滑り、膝から床に崩れ落ちる。もう何をする気も起きない。
『努力は必ず報われる』
そんな言葉がふと思い出される。
「…嘘つき」
か細い声が静かな部屋に消えていった。
運命の瞬間 星癸りる @rilu_rilu
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