確かな実力がありつつも取り巻く環境やタイミングのせいで、吹奏楽部全体として名誉を貰う機会に恵まれなかった主人公たちが三年生最後のコンテストに全てを懸ける姿に胸を打たれました。
本来であれば吹奏楽の花形になれない打楽器隊だけで、吹奏楽史に残る快挙を達成するというロマン。それを達成するために必要な力と人材、それから熱量がまるごとシミュレートされるような感覚がして、まるで本作でのできごとが実際に現実で起こっているのだと錯覚する。
また、吹奏楽に詳しくなくても無理なく浮かんできて、現実味を帯びてくる説得力のある描写と、それぞれのキャラクターの個性が映える場面の切り取り方とシチュエーションは、彼女たちを応援するための原動力になる。
この物語には青春という一瞬で過ぎ去ってしまうキラメキだからこそ届けられるパワーと、何かを成し遂げるときの多大なる感情の隆起と放出、吹奏楽しいて言えば音楽への希望と愛情が詰め込まれていたことが、読了後の感情をもって締め括られるのです。
小説というかたちで表現するからこそ映える音楽の感動と彼女たちの熱さを是非、体験してみてください。
素晴らしい作品をありがとうございました。
洗練された文才の作者さんによる、「青春×音楽」の爽やかで重厚な作品です!
コンクールの審査員には様々な人がいます。
伝統を重んじる保守派、変化を受け入れる改革派、楽譜への忠実性を重視する作曲家、楽団でうまく落とし込んだものなら魅力的だと捉える作曲家など、立場も評価軸も異なる人が集うのです。
講評用紙では褒めちぎられているのに結果は銅賞、なんて理不尽なことも少なくはないでしょう。
本気で打ち込めば打ち込むほど、辛い現実が待ち受けているかもしれない、そんなシビアで残酷な世界です。
――それでも少女達は、どうしてコンクールに出場したがるのでしょうか?
冷静歴女な火野
情熱的な水島
しっかり者の木本
不思議ちゃんな金森
癒し系土橋
個性豊かな面々揃う吹奏楽部。担当楽器は打楽器5人、学年は3年生5人。「来年どうするんだ?」と頭を抱えたくなります。まさに崖っぷちパーカッションです。
しかし、実力は折り紙付き。全員がスペシャリストのスター集団です。
5人が目指すのは12月開催のアンサンブル大会。次の駒に進めた場合、3月後半に全国大会があります。ところが、練習開始して数カ月後、部員は苦難に見舞われることになりました。
理知と情熱の狭間で揺れる場面と、小気味のいい日常パート、どこまでもひたむきな練習シーン。そして、豊かな表現で紡がれる圧巻の演奏描写は必見です。
青春の1ページを開いたらもう最後で、あっという間の28話でした。
金管も、木管もいない吹奏楽部。
青春を打楽器に捧げた少女たちの咆哮に、ぜひ耳を傾けてみてください!
作中で象徴的に用いられる音楽――Tubular Bells。
これは単なる引用曲ではない。むしろ、この物語そのものの構造を映し出す鏡だ。
1973年、**マイク・オールドフィールド****はアルバム『Tubular Bells』を発表した。冒頭のフレーズはホラー映画『エクソシスト』のテーマとして世界的に知られているが、作曲者自身が語っている通り、この音楽は本来、恐怖を描いたものではない。イングランド、ソールズベリー地方の、単調で退屈な風景――変化の乏しい日常を、淡々と音に置き換えたものにすぎない。
しかし、この曲を「演奏する側」に立った瞬間、その本質は牙を剥く。一度でもピアノで再現しようとすれば、誰もが異常性に気づくはずだ。メトロノームは合っている。テンポも狂っていない。それなのに、右手と左手は明らかに違うリズムを生きている。まるで二つの人格が、同じ身体を共有しながら、互いを顧みずに演奏しているかのように。
この分裂こそが、『Tubular Bells』の本質であり、そして同時に、この物語の本質でもある。
登場人物たちは同じ時間、同じ場所、同じ「部活」に属していながら、それぞれが異なる拍子で生きている。全国という目標、音楽への執念、身体的制約、過去への後悔。すべてが同一のテンポを刻んでいるように見えて、決して噛み合わない。それでも音楽は前へ進む。
『Tubular Bells』が示したのは、調和ではなく、並走だった。
完全に理解し合えなくても、同じ小節を生きることはできる。
この物語もまた、その不揃いなリズムの重なりによって成立している。
だからこそ言える。
作中で鳴り響く「チューブラーベルズ」という音楽は、単なる引用ではない。
それは、この物語がどのように鳴っているかを、そのまま示す――
構造そのもののメタファーなのだ。
廃部寸前の吹奏楽部が、最後に大きな何かを成し遂げようと努力する現代ドラマ作品です。
主人公は、様々な要因で人が減ってしまった吹奏楽部の部員を務める女子高生。
種類ごとのより分けができるほどの部員もおらず、打楽器ばかりが5人残っている状況です。
一般的な吹奏楽部が目指す大会には、すでに出られない。けれど、残ったメンバーで何かを成し遂げたい。
そう考えた彼女たちは、別の大会への参加を目標に練習を始めます。
彼女たちが成そうとするのは、音楽的には革命でも、大会的には閉口もの。
それも覚悟で練習を続ける彼女たちは、本番でどんな音楽を奏でるのか。
ぜひ読んでみてください。