硝子
綴屋千瀬
硝子
母は私によく愚痴を零す。
内容は実に様々だが、大体は義母についてで、
「扉を閉める音がうるさい」だとかそんな物だ。
私は1度たりとも愚痴に文句を行ったことがない。ニコニコと、「そうだね」と返す。
さて、問題。母が憤怒している。私はどうすればいい。ヘタに同情するのはいけない。噴火の如く。取り返しがつかなくなる。
回答。やはり笑っているのです。
ニコニコ、ニヤニヤ、それよりももっと薄く。
実の母をこれ程まで恐れ、文句を言わず、精神を病まず────。いや、それも勘違いに過ぎないのではないか。既に私はひび割れた硝子細工を怒られないように棚の裏に隠すようなものなのだ。
母の名前はショウコといった。
「ショウコ、なんてオバサンみたいな名前私、好きじゃない。」
これはまた私にはどうしようもないことで、やっぱりニコニコ笑っているのです。
「そうか、それは大変だな。」
友人は微かに微笑んで応えます。
友人に愚痴を零す私も、やっぱり悪いのです。
硝子 綴屋千瀬 @tuduriya_
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