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「地味な成果だねぇ。」
と、マヌカはつまらなさそうに吐いた。机に並べられた破れ掛けの本や折れ曲がった絵を、まじまじと見ることもなく、さっさと枚数だけ確認している。
「でもでも、本の状態は比較的良いし?この絵とか、かなり綺麗なんだけどなー?」
「読めない本なんて、紙束以下さ。」
捨てるように言葉を発し、マヌカは少ない納品代を、気遣いなくジャラリと並べた。
「……マヌカのケチ。」
「ともあれ、漁られた痕跡も少なかったんで、しばらくはここに絞ろうと思います。」
テックは改めて地図上のカコウ山を指差した。場所を口に出さずに指で示すのは、他の冒険者に聞かれないためだ。不必要にライバルを増やさないように、こういった小賢しい工夫が次々考えられている。
そうだ、とアトリはわざとらしいアクションをし、
「私が本を読めるようになれば良いんだわ!マヌカ、読める人知らない?」
と、グイグイとカウンターの台越しに迫りよる。
「あー?直接は知らないねぇ。ザッカーのコロニーになら居るんだろうけどさ。」
ザッカーは、ここより少し離れた街だ。居住区つまりはコロニーの規模も大きく、文化的にも技術的にも進んでいる。周囲の開拓が進んでいる分、発見を求める冒険者には合わない土地だが、民間人、特に学者などはこのような場所で情報を収集し、分析し、発信している。
「まあ今時、旧人類の文字をスラスラ読めますなんて人がいりゃぁ、大スターだわな。」
「むぅ、そこまでハイレベルじゃなくても良いんだけどな〜。」
夕暮れに染まるガッシャマの町並みを眺めながら、アトリは光線ブレードの持ち手部分を見て一息。彼女はザッカーに居る友人について思い出していた。その友人は旧人類文化の学者であり、アトリにとって良い話し相手だった。光線ブレードは彼が、「学者仲間から貰ったけど使い道がないから」と譲ってくれたものだ。
(また顔を合わせるのもいいかもね。)
と、思い出に浸りながら、食品の買い出しのために市場へと向かった。
翌日。テックとのいつもの待ち合わせ場所に、今日はアトリの方が先に着いた。
何の気もなく爪を見て待っていると、テックが挨拶と共に、
「なんか手紙があるらしいから、探索に出る前にギルドに来いってさ。」
そういってそのまま流れるように彼はギルドのある方へと進んでいった。
なんだろう、と思いながらアトリは後に続く。ワクワクの予感を引き連れて。
遺世界物語 どすこい時雨丸 @dskydskbsglml
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