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___犬、猫、鳥、兎……こういった動物を先祖に持つ我らが人類の後継者たり得たのは、一重に「人類の生活を最も近くで見てきたから」である。
旧人類の意思は、彼らの愛情と共に受け継ぎ、我々にはそれを守り抜く義務がある___
(少し主張激しめな本だなぁ。)
頬杖をつきながら、アトリは自室で本を読んでいた。指先で”物書き棒”を器用にくるくると回しながら、目線は淡々と文字を追って。
アトリは好奇心旺盛だ。その関心は特に旧人類に対して向けられている。
彼らを崇拝しているわけでもない。彼らを貶しているわけでもない。アトリにとって旧人類は、「何故?」「どうして?」といったただの疑問の対象に過ぎないのだ。
(……旧人類はここでどんなふうに暮らしてたんだろうな。)
ただの石ではない、硬質な壁を見ながら、アトリは考えた。この壁ですら、旧人類の名残である。
目に映るもの、全てに意味がある。そこには意義があり、原因があり、結果があり……。アトリはそういったものを”無視”できない性分だった。
旧人類の真似から生まれた”ふかし芋”を頬張る。旧人類と同じ味なのだろうか、と考える。
旧人類の真似をして水浴びをする。やや冷たい。温度調整はどうしていたのかを考える。
旧人類の真似をした寝間着を着る。彼らは夢を見たのだろうかと考える。
彼女にとって、思考こそ日常であり、追求こそ生き甲斐であった。
(……逆に、なんでみんなは気にしないんだろう。)
そう、思ってしまうほどに。
ふわぁとあくびをして、藁のベッドに横になる。旧人類の”寝台”を再現・量産できるほど、この町の技術は進んでいない。
窓から見える、空に浮かぶ”第二の陽”を見上げる。今日は半円の形だ。
(旧人類は、結局どこにいったんだろう?宙の向こうって言っていたけど、本当かな?)
どうやって、どうして、なんで、彼らは。
思考と共に、眠気が巡る。静かで、少し寂しい夜。
アトリの部屋を、小型の”機械灯”と”第二の陽”が、優しくも弱々しく照らしていた。
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