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概要
あなたの“投函したはずの”嫌な予感を、そっと呼び戻す。
最初は図書館の角に、色のない“忘却ポスト”が立った。嫌な記憶を書いて投函すれば、七十二時間で消える。切手は五分記憶につき一枚。市は「心のごみ分別」をうたって控除までつけた。怒鳴り声は減り、議事録は読みやすくなり、ニュースは柔らかい。だが、ヒヤリ・ハット報告も急減し、バス運転士の“危ない癖”は回覧されない。地図の赤い印は白く戻り、浸水マップの青に新築住宅が建つ。学校のいじめは「謝罪済」のスクショで閉じられ、保健室のベッドだけ埋まっていく。
ダムはマニュアル通りのはずだったが、操作室にいた人の“怖さの記憶”は三日前に投函されていた。追悼式では忘却切手が無料配布され、「未来志向」の掛け声とともに事故調は曖昧に終わる。やがて市役所前に巨大な灰色の筒が建ち、「街の歴史資料の一時保管」と称して、過去の議
ダムはマニュアル通りのはずだったが、操作室にいた人の“怖さの記憶”は三日前に投函されていた。追悼式では忘却切手が無料配布され、「未来志向」の掛け声とともに事故調は曖昧に終わる。やがて市役所前に巨大な灰色の筒が建ち、「街の歴史資料の一時保管」と称して、過去の議
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