第4話 デート(?)当日の待ち合わせ
──翌日。
現在朝の9時30分。俺は昨日約束した集合場所に予定より30分前に着いていた。
「楽しみにしすぎてはやく着いちまった」
自分で言って、自分に苦笑する。
今日は近猪さんとスイーツ店に行く、別にデートだとか思ってないし、宿題のお礼で行くだけだし!浮かれてなんかいませんけどね!
(こんな早く来たのは…そう!女子を待たせてしまうのは良くないからな!そうそう!)
などと言い訳を脳内で考えながら、近猪さんを待つことにする。
「落ち着け俺、平常心平常心」
小さく呟いて心を落ち着かせる。
その直後だった。
「──遠野くん!」
ドキッっと心臓が跳ねる。
声が聞こえた方へと振り返る、そこにいたのは──。
「早いね遠野くん、もしかして待たせちゃった?」
「そ、そんなことないよ!俺も来たばっかだし!」
咄嗟にそう言ったけど本当のこと言ったら気を遣われてしまいそうだからこのままでいいだろう。
近猪さんがじっと見つめてから、クスッと笑った。
「そっか、なら良かった~」
よし、バレてはなさそうだ、多分。
改めて、近猪さんの姿を見る。
ピンク色のワンピースは派手過ぎない程度に落ち着いた色合い。
上から羽織っている白いカーディガンも清楚で、足元はシンプルなパンプス。ちゃんと可愛い。
(可愛い。俺今日この子と出かけるんだ…)
そう思ったら、胸がむず痒くなる。
固まったままの俺に声を掛けてくる近猪さん。
「どうかしたの?遠野くん」
「え!あ、いや、その~、近猪さんの私服姿可愛いなって思って!思わず見惚れちゃってたんだよ!」
「………え?」
きょとんとした顔をする近猪さん。
次の瞬間──。
「~~~~~ッッッ!!」
顔と耳が一気に真っ赤になった。
やばい!これ言い過ぎだかもしれないやつだ!
「ご、ごめん!今のなし!聞かなかったことにして!!」
「む、無理!もう聞いちゃったから無理だよ!!」
二人してその場であたふたとしていた。
「……ずるい」
そう言いながら俺に近づいてきて、俺の手を繋いだ。
「ち、近猪さん!?」
突然のことで声が裏返る。
けれど、繋がれた手はしっかりしていて、離す気配はまったくない。
「は、はやく行こ!」
そう言って、近猪さんは俺の手を引いた。
繋いだ手を見て、謎の緊張感が俺を襲う。
この前の相合傘の時よりは密着感はないが、それでも緊張感はする。なにか話そうと思っても言葉が思いつかない。
「…あのね、遠野くん」
何を言おうか考えている時に、近猪さんに話し掛けられる。
「正直に言って…可愛いって言ってくれて、ありがとう。すごく…嬉しかった、よ?」
「……そ、そっか」
それだけ言うのが精一杯だった。
胸の奥がじんわり温かくなって、変に落ち着かない。
「今日は楽しもうね?遠野くん♪」
「ッ……」
握られてた手を、さらに強く握ってくる。
(…近猪さん、距離感がやっぱりおかしいよ)
本当にそう思う。でも、不思議と心地が良いと思える。
こうして俺達は、手を繋いだまま電車に乗り込んだ。
近すぎませんか近猪さん!? G0st @G0st
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