第3話 お礼を聞き、予定が埋まる。

「……終わった~!」


 なんとか授業前に数学の宿題をやり遂げれた。近猪さん様様です。


「お疲れさま~遠野くん!」


「いや~、ほんと助かったよ。ありがとう近猪さん」


「えへへ~、どういたしましてっ!」


 そう言って、満足そうな笑顔で頷く。…頷くのは良い、笑顔も良いものです、が!


「……あの、近猪さん?」


「ん?どうしたの遠野くん?」


 近いんです。

 もう宿題は終わったはずなのに、まだ肩が触れている。というか、さらに寄ってきてない?


「いやさ、宿題は終わったし離れた方がいいんじゃないかなと思いましてね?」


「え~?別にいいんじゃん?あたしら友達だしさ、気にしない気にしない」


 気にしちゃうよ?思春期男子舐めないでもらいたい(?)。


「そ、それより宿題本当にありがとう。お礼がしたいんだけど、どうかな、なにかある?」


「なんでもいいの?」


「良いよ、俺ができる範囲であればね。あ、家は買えないよ?」


「家は要らないよ!?…う~ん、どうしようかな~?」


 それからずっと悩みに悩んでいる近猪さん。

 そのタイミングで、教室にチャイムが鳴り響いた。


「チャイム鳴ったぞ~。席に着け~」


 教室の扉が開き、先生が入ってきて席に座るよう促す。


「放課後までに考えとくね?」


 言いながら近猪さんは名残惜しそうに椅子を戻す。

 放課後何言われんだろ?ちょっと気になったけど、授業にすることにした。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 何事もなく時間が経過し、放課後となった。

 帰る準備をしていると近猪さんが近づいてきた。


「遠野くん!一緒に帰ろ?」


「近猪さん?えっと、友達と帰らないの?」


 ちょっと言ってて後悔した。これは不味いこと聞いたかな?


「うん!今日はタイジョブだよ。それとも何か予定あるとか?」


「い、いや!なんもないよ!…一緒に帰ろっか」


「やった!」


 可愛くガッツポーズしながら、自然と俺の横に並ぶ近猪さん。


「じゃ、帰ろ帰ろ~」


「おっけー」


 二人並んで校舎を後にする。ちょっとその時周りの視線が気になった。主に男子の。嫉妬に満ちた目が怖かったっす…。


「ねえねえ遠野くん、お礼決めたの!」


 歩きながら、近猪さんが弾んだ声で言う。


「何にしたの?俺にできる範囲でお願いします」


「大丈夫だよ、お礼なんだけど~」


 変なお願いじゃないといいな思いつつ話を聞く。


「明日って予定ある?」


「明日って丁度休みだよね?俺は暇だけど」


「ほんと?じゃあさじゃあさ!」


 近猪さんは一歩、俺の方に寄ってくる。


「最近オープンされたスイーツ店があるの!一緒に行こ?」


「…へ?」


 こ…これは、まさか、あの、伝説の、デートでは!?!?!?!?(超オーバーリアクション)


 「パフェがすっごく美味しいらしいの!電車でちょっと移動しなきゃ行けないんだけどね」


「えっと、それがお礼ってやつ?」


「うん!」


 即答。


「それに…」


「それに?」


「遠野くんと行きたいなって思ってたの…」


 …なんだこの凄まじい破壊力パワーは!?人類が滅んでしまう!!!可愛さで!!!!


「…わかった。行こっか」


 気づいたら受け入れていた。


「やった!」


 可愛くガッツポーズ。今日も可愛い。


「じゃあ、連絡先交換しよ?はいスマホ出して出して」


 自然な流れで連絡先を交換してくる。俺でも見逃しちゃうね(おい)。


「交換完了~」


 などと脳内でふざけていたらあっという間に交換が済んでいた。


「とりあえず明日10時に駅前で集合ね!」


 こうして明日の予定が、”宿題のお礼休日デート(?)”が自然と決まっていた。


 …やっぱり近いよ近猪さん。

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