クラスの誰も悪くない

　事故なのか、自殺未遂なのか――。
　中学一年の春、屋上から落ちた少女・花音をめぐり、「クラスの誰も悪くない」と言い切る人たちがいる。
　娘を守ろうとする保護者代表の母親。
　「ただの指導だった」と繰り返す担任教師。
　いじめなんて見ていないと主張するクラス委員。
　そして、ベッドの上で目を閉じたままの花音と、その母親。
　それぞれの“告白”は、少しずつ噛み合っていない。
　生活記録カードに書かれなかった小さな悪意と沈黙。
　真相に近づくほど、「誰が加害者で、誰が被害者なのか」が溶けていく。
　最後にひっくり返るのは、“世界の見え方”か、それとも、あなた自身の記憶か。