第2話:手相占いの午後

そうだ、昨日、YouTubeで見たんだけど……


「カホ、手相を見てやるよ」


そう言うと、カホはすぐに返してきた。

「センパイ、カホの手に触るために、涙ぐましい努力をしてますね!」


(してねえよ!)


「まあ、いいです!そうやって芸を仕込んできて、カホを楽しませてください!」

カホは上から目線で言った。


(芸じゃないし…)


ソウヤはめんどくさそうなので、言い返すのをやめた。

カホの左手を手に取って、「じゃあ、いつ頃、結婚できるか見てやるよ」と言って結婚線を探した。


あー、でも、カホの指、細くて長くてきれいだな…女の子の手って感じだ…

ソウヤは密かにドキドキしていたが…カホに気とられないよう平静を装っていた…


「――ん?」


「なんですか、センパイ!」


「カホ……結婚線がない!……」


「えー、そんなこと!」

カホはYouTubeの動画と自分の左手を見比べて、驚いたように声を上げた。


「あー、ホントだ。センパイ!どうしてくれるんですか?

カホ、センパイと結婚できないじゃないですか!

センパイ!責任取ってください!」


(いやー、オレの責任ではないと思うけど……)


カホはソウヤをじーっと覗き込んでイジワルそうな目をしていた。


カホは、逃がす気ゼロの距離で、じーっと見つめてくる。


どうせこの後、いつものウザ絡みモードに入ってくるに違いなかった。

ソウヤは防衛態勢に入って、カホの攻撃に備えた。


ネットで調べてみると、結婚線がない人は結婚できないのではなく、

今はまだ考えていないだけということらしい。


「モー! センパイびっくりさせないでください!」

カホは笑いながら言った。


そのとき、教室のドアが開いて声が響いた。

「失礼しまーす。二年C組の二宮にのみや 夏穂かほいますか?」


ドアを見ると、カホのクラスの下級生女子のようだ。


女子はカホを見つけて、

「いたいた。先生が自習中止だっていうので、カホを回収に来ましたー」

と言って、カホを引っ張って行った。


「じゃあねーセンパイ!」

カホは手を振って、自分の教室に帰って行った。


カホが帰った後、教室は音一つない静寂に包まれていた…

ソウヤは恐るべし…カホ!と思った…

静かになった教室が、妙に広く感じた。


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