夜のカフェテラス
その男と出逢ったのは夜だった。
あの頃の俺たちは夜になると外へ出て、昼間ずっと描いている自分への褒美の給金のように酒を飲んだ。
俺たちが出逢ったのは、夜の始まり。
まだ、太陽の燃えカスが燃え残ってくすぶっているような暑い夜のはじめのことだった。
中途半端に夏が始まって、虫の鳴き声が夜の中で目立った。
鳴き声は夜空の星のようで明滅しながらチリチリと続いている。
俺たちは夜の中を泳ぐ。いや、ただようクラゲみたいだった。
昼間の暑さの燃えカスで、じとっと汗がにじむ。
生ぬるい夜の中をたゆたって俺たちはそこで偶然鉢合わせした。
俺もヤツも、もうすでに一杯ひっかけていて気が大きくなり少し陽気になっていたのにも関わらず、ヤツはというと仏頂面で苦いコーヒー飲み込むときみたいに黙っていやがった。
後から聞いたのだがその時のヤツはそれでも機嫌がいい方だったそうだが俺にはそうはみえなかった。
そのカフェは夜になると酒を飲む客が集まる。
この日はカフェの店内は人でいっぱい。仕方がないから外で酒を飲む客が幾人かいた。
夜のカフェテラスはそこそこ人がいて
騒がしく騒ぐ客の間を縫ってビールを受け取ると俺は外へ出た。
ヤツはすでに外にいた。
俺もヤツも立ったままビールをちびちびと飲んでいた。
俺はヤツと目が合った気がした。
普段なら絶対しないがその日の俺はなぜか自分からヤツに話しかけていた。
実はヤツのことは見知っていた。
俺もヤツと同じく絵描きだから。
平日の昼間っからヤツは絵を描くために街中の石の階段に座っていることもあった。
俺はヤツを知っていたがヤツは俺を知っていたのだろうか?
「やあ。」あぁとかやあとも聞こえるようなあいまいな相づちを打つヤツ。
「ここあいてるかい?」
酔っぱらい特有の勇気を発揮して俺はヤツのそばに腰をおろした。
夜のカフェテラスはまだ暑かったが昼間よりはだいぶマシ。
俺は喋りが上手い方じゃないけのだけれどヤツはそれにわをかけて口下手だった。
仏頂面でアァとかそうとか乏しい反応。しかし、その日の俺はなぜかその薄い反応が心地よく感じた。
ヤツと付き合いだしてからわかったことだけど、沈黙が苦にならない間柄の人間って居る。
俺にとってはヤツがそうだった。
ヤツと過ごしていると俺はいつもの倍くらいおしゃべりになる気がする。
それでも会話は途切れがちになるが、沈黙が苦にならない。俺はヤツと過ごすのが心地いいとなぜか思うことが多い。
フィンセントとエドヴァルド 槇本大将 @makimotodaisuke
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