冬の月モノノケ今や神を討つ
ごめんなさい、悪いけどあなたとは一緒に暮らせない
ケイの声だ、
雪山で目をつむると蘇ってきた
俺は、師匠を失い、師匠のかたきである奴を討つためにこの5年間を費やしてきた
そんな俺にケイは愛想を尽かしたのだろう
かつて奴はこのクニでは神として崇められてきた
しかしヒトは奴をクマと名付け、神の座から引きずり降ろしたのだ
ヒトの武器はあらゆること、物に、外部世界のすべての物事に、名前をつけることだけることだ
ヒトは名付ける、という魔法により、世界を我が物として支配したのだ
神であった奴は、人によりクマはと名付けられ、神を、神の座から引きずり降ろすのに成功した
そしてクマと成り下がった熊はヒトに駆逐される存在に、モノノケと同類のケモノになっていしまった
しかし、奴は、神の矜持をもって反撃を開始した
神に成り代わったと自惚れたヒトは、神の領土を侵し、やがて神からの反撃を受けることになったのだ
俺はヒトではない、ヒトがどうなろうが知ったこっちゃない
俺はモノノケだ
モノノケとして奴を討つ、かつての神を討つ
何かが音もせずに俺の背後に回った
神、に違いない
かたきを討つ
あの日のリベンジだ
振り向きざまに猟銃の引き金を引く
神殺しなんて不遜な考えはない
モノノケとしてケモノを討つ
ズシン
手応えはあった
しかし
目の前にあったのは、、、、
(fin.)
俳句と散文「熊、そして神」 よひら @Kaku46Taro
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