第24話
会談・午後の部 その2「山林物件の売却とダンジョン調査隊の派遣」
短い休憩を挟み会談は再開された。
議題はダンジョンそのものの扱いに移る。
総理が遥斗を見て口を開いた。
「藤堂さんダンジョンが存在する土地についてお考えをお聞かせください」
遥斗は、らかじめ考えていた言葉を口にした。
「その山林物件ですが……、国に売却しても構いません」
会議室がざわつく。
「個人が管理するにはあまりにも危険で影響が大きすぎます」
「ただし一つ条件があります」
総理が頷く。
「聞きましょう」
「ダンジョンの一般開放を前提に動いていただきたい」
「閉鎖・秘匿するのではなく国民のために活用してほしい」
一拍の沈黙。
官房長官が慎重に言葉を選ぶ。
「……山林物件の売却については国として前向きに応じます」
「ただしダンジョンという前例のない存在を含むため、適正価格の算定に時間をください」
遥斗は頷いた。
「理解しています」
「ダンジョンの一般開放については?」
総理が答える。
「現時点では“検討”です」
「安全性、社会的影響、国際関係……、慎重にならざるを得ません」
それも想定内だった。
続いて官房長官の指示で話題はダンジョンの危険度評価に移る。
「各階層の魔物の強さについて改めて説明をお願いします」
遥斗はあくまで一般人の感覚として語った。
「1階層のスライムですが……、正直に言えば小学生でも倒せるでしょう」
会議室に信じられないという空気が広がる。
「2階層の小型魔物、ラビット、バット、ラット系などです」
「動きは素早いですがソロでも余裕をもって討伐可能です」
「3階層と4階層」
「植物系魔物や鳥系、猪系、牛系の魔物です」
「パーティーを組めば安全に討伐できるレベルだと思います」
「5階層のウルフ系はそこまで強くはありません。ですが、やはりパーティー推奨ですね」
遥斗は少し表情を引き締めた。
「問題はボス部屋のウェアウルフです」
「魔法は使いませんがスピードが非常に速い。油断すると一瞬でやられます」
自衛隊関係者が小さく頷く。
「6階層からは難易度が一段階上がります」
「ゴブリンが出現します」
「人型魔物が棍棒やダガーを持って襲いかかってくる」
「この“恐怖”は今までの階層とは質が違います」
会議室の空気が明らかに重くなった。
総理が一度、全員を見回してから言った。
「藤堂さん、政府としてダンジョンへの調査隊を派遣したい」
「その際――」
官房長官が言葉を継ぐ。
「ダンジョンの場所への案内」
「そしてダンジョン内部での案内人、アドバイザーとして同行してほしい」
遥斗は一瞬も迷わなかった。
「当然の義務だと思っています。お引き受けします」
総理は深く頷いた。
「ありがとうございます」
「これは国家としても非常に心強い」
会談はひとまずの区切りを迎えた。
だが全員が理解していた。
――ここからが本当の始まりだ。
政府調査隊。
国家レベルでのダンジョン踏査。
そしてダンジョンの一般開放に向けた第一歩。
藤堂遥斗は静かに次の段階を見据えていた。
日本に日本人専用ダンジョンを作りました 鉄斎 @tessai2024
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