第6話

山の奥、渓流の音すら届かない場所。


俺は地面に直接ダンジョンコアを置いた。


掌に収まる大きさの結晶体。

淡い光を放ち、脈打つように輝いている。


「……始めるか」


意識を集中しコアに触れた瞬間、膨大な情報が流れ込んできた。


ダンジョン設定。


まるでゲームの管理画面のようだが感覚はもっと直感的だった。


規模設定


階層数、0階層から100階層まで。


そして101階層:ダンジョンマスタールーム。


全体の広さは、東京の区一つ分。


「……さすがにでかいな」


だが、これくらいなければ意味がない。


ダンジョンの入り口は幅15メートル。

そこから50メートルの直線通路。


その先にあるのが0階層。

魔物は配置しない。


「ここは街になる場所だ」


将来的に自然とダンジョンタウンが形成されることを想定する。


各階層には、必ず安全地帯を設置。

魔物侵入不可、戦闘不可、休憩・回復専用。


そこにポータルを設置する。

到達した階層まで瞬時に移動可能、帰還先は、必ず0階層。


「迷子や閉じ込めは無しだ」


5階層ごとにボス部屋。

ボス討伐後、0階層へ戻るポータルを出現。

さらに、1つ下の階層へのポータルを解放。

挑戦を続けるもよし撤退するもよし。


「無理はさせない」


ボス部屋からの撤退は常に可能とする。


最後に、最重要項目。

スタンピード:無効。


ダンジョンの外に魔物は一切出現させない。


現実世界を壊す気はない。


「これは“狩場”であって災害じゃない」


起動完了


すべての設定を確定した瞬間――


地面が静かに震えた。


山が鳴るような低音、だが破壊は起きない。


目の前の空間が歪み巨大な石造りのゲートが出現する。


幅十五メートル。

古代遺跡のような威圧感。


ダンジョンは完成した。


ダンジョンマスターとして俺は理解していた。


ここはもう単なる異世界のコピーではない。


日本に存在する唯一のダンジョン。


そして完全に俺の管理下にある。


「……これで舞台は整ったな」


静かな山奥で日本初のダンジョンが密かに産声を上げた。

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