第4話
日本で生活する以上、どれだけ異世界の資産があっても円がなければ始まらない。
そこで俺は《神器アイテム・幸運の腕輪》を装備した。
「……やりすぎるなよ」
銀行のATM前、選んだのはロト7。
3パターン、各3口、合計9口。
買い終えた時点で妙な確信があった。
――当たるなこれ。
翌日、口座を確認して言葉を失った。
非課税、約36億円。
キャリーオーバーが発生していたため12億×3口、36億円である。
震えることもなく妙に冷静だった。
異世界を一度体験してしまうと現実の金銭感覚がどこか壊れているらしい。
「……これで金の心配は消えたな」
やるべきことを淡々と整理する。
家は両親が残してくれた一戸建てがある。車も一台ある。問題なし。
公共料金はすべて口座引き落とし、すでに滞りなく動いている。
国民年金、国民健康保険の切り替えも済ませてある。
無職でも制度上は何も問題ない。
注意点は――
運転免許の更新日、車検の期限。
「ここだけは忘れたらアウトだな」
確定申告は……考えるだけで面倒だ。
「税理士、雇おう」
金はある、時間と手間を削る理由はない。
「……こんなところか」
生活基盤としてはほぼ完璧だった。
新たな問題
だが、ひと息ついてから気づく。
「……で、アイテムどうする?」
《無限ストレージ》の中には神話級装備、ポーション、素材、魔導具、インゴット、ダンジョンコア。
個人で持ち続けるには明らかに持て余す。
政府に渡す気はない。
裏に流す気もない。
「なら正面から売れる環境を作るしかないか」
その答えは自然と一つに収束した。
ダンジョンという解決策
「……ダンジョンを作る」
日本国内、人が寄り付かない場所。
ダンジョンコアを使ってダンジョンを構築し一般開放すれば、アイテムの流通は“正当化”される。
出所はダンジョン。
誰も文句は言えない。
「問題は場所だな」
考えてすぐに条件を決めた。
渓流釣りができる山。
「これなら“趣味で山を買った”で通る」
もう一つ必要なものがある。
秘境に近い山林、普通の車では話にならない。
転移魔法で現地に即座に転移可能だが、実際に現地に行った証拠が必要となる。
ネットでキャンピングカーを調べる。
「……ウニモグか」
中古のウニモグ・キャンピングカー、悪路走破性は文句なし。
納車に時間がかかるなら――
「金を積めば何とかなるだろ」
36億円ある使わない理由がない。
すべてはまだ表に出ていない。
誰にも知られていない。
だが確実に世界を変える準備は整いつつあった。
「ダンジョンか……」
それは藤堂遥斗が“表の世界”で踏み出す、最初の一歩だった。
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