第7話
めしまろさんは夜になると活発になる。
深夜二時。私が論文を書いていると、めしまろさんは突然走り出す。床を蹴って、壁に向かって跳躍し、空中で体をひねり、着地する。それを繰り返す。何もないのに。何かに追いかけられているように。あるいは、何かを追いかけているように。
「何と戦ってるの」
私は尋ねる。めしまろさんは立ち止まって、じっと虚空を見つめる。目が大きく開いている。瞳孔が広がって、琥珀色の虹彩が細い輪になっている。耳が前を向いている。ひげがぴんと張っている。
何かが、いる。
私には見えない。聞こえない。感じられない。でもめしまろさんには、確かに何かが見えている。
「……見えてるんだね、何か」
めしまろさんは私を見た。一瞬だけ。それからまた、虚空に視線を戻した。
その目は、どこか遠くを見ているようだった。私がいる場所とは違う、どこか遠く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます