第8話
めしまろさんの鳴き声は、ふしぎだ。
普段は「なゃあ」と鳴く。可愛い声。でも時々、違う声を出す。低い声。喉の奥から響いてくるような声。猫というより、もっと大きな動物の声に聞こえる。
ある夜、めしまろさんがその声を出したとき、私は録音してみた。
後で聞き返すと、声が入っていなかった。
めしまろさんが鳴いたことは覚えている。確かに聞いた。喉の奥から響く、低い声。でも録音には、何も入っていなかった。無音。私の呼吸の音だけ。
機械の故障かもしれない。録音に失敗しただけかもしれない。
でも、それ以来、私はめしまろさんの声を録音しようとは思わなくなった。
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