第6話

 猫は液体である、という冗談がある。


 めしまろさんを見ていると、冗談ではないような気がしてくる。


 ある日、めしまろさんはティッシュの箱の上で眠っていた。ティッシュの箱は、めしまろさんの体の半分くらいの大きさしかない。なのにめしまろさんは、その上で完璧に丸くなっていた。体がはみ出していない。物理的に不可能なはずなのに。


「どうなってるの、その体」


 めしまろさんは片目を開けて、私を見た。「何か問題でも?」という目。


 問題しかない。骨格的に、筋肉的に、どう考えても入りきらないはずなのだ。でもめしまろさんは入っている。


 私は写真を撮った。後で見返しても、やっぱりおかしい。体積が合わない。でもめしまろさんは確かにそこにいる。ふわふわの毛並みを日光に輝かせながら、ティッシュの箱の上で眠っている。


 猫は、私たちの知っている物理法則とは、少し違うルールで生きているのかもしれない。

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