第5話

 めしまろさんが消えた日のことを、私は今でも覚えている。


 朝、研究室に来たら、いなかった。いつもの場所に、めしまろさんの姿がなかった。窓は閉まっていた。ドアも閉まっていた。どこにも出ていける場所はなかった。なのに、いなかった。


 三日間、私はめしまろさんを探した。建物の中を歩き回った。屋上に出た。地下に降りた。近くの公園も探した。名前を呼んだ。「めしまろさん」「めしまろさん」。


 返事はなかった。


 四日目の朝、私は泣きそうになりながら研究室のドアを開けた。


 めしまろさんがいた。


 いつもの場所に、いつもの姿勢で。丸くなって、眠っていた。まるで、どこにも行っていなかったみたいに。


「めしまろさん」


 私は駆け寄って、抱き上げた。ふわふわの体。温かい。生きている。


「どこ行ってたの」


 めしまろさんは私の腕の中で、目を細めた。それから私の顎の下に頭を押し付けてきた。ごろごろ、と喉が鳴った。


 答えは、なかった。


 でも、戻ってきてくれた。それだけで、十分だった。


——そう思おうとした。でも、心のどこかで、ずっと気になっていた。


 めしまろさんは、あの三日間、どこにいたんだろう。

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