第2話 越えてはいけない一線。

「もういいのか、気になることすべて答えるぞ。その為の仮病だ」

 その為の仮病って。沙希さきはそう言ってクスリと笑った。


 よし! よし、オレ! グッジョブ、オレ! 沙希を笑わせるなんて原作漫画にはない! これは快挙だ! 調子乗って腹抱えて笑い合える親子関係にするぞ!


「あのね……お父さん。怒らない?」

 なにこの笑顔……めっちゃかわいい! そうだ!

「怒らないけど、条件がある!」

「条件?」

 緩みかけた表情が固まる。まぁ、それも狙いの内。緩急つけるのは恋の常とう手段。いや実の娘だろと思うだろうが、そうじゃない。実の娘だからこそ、全力で口説いて口説いて「お父さんは私がいないと……」なんて思って貰えるところまで行くぜ!


「そう、その条件とは……」

「条件とは?」

「さっきの顔で写真撮らせて! めっちゃかわいかった! 超絶ラブリー」

「か、かわいい⁉ 超絶ラブリー⁉ お、おと、お父さん⁉ 私だよ、マミじゃないよ?」

「おおっと、ここで際どいネタぶっこんできましたか……さすが我が娘……でも、お父さんは負けない! お願い、沙希! さっきの顔で待ち受けしたい! 部長や課長に娘自慢したーい!」

「へっ⁉ しかも待ち受け⁉ 会社で見せるの……ヤダ、ムリ」

 ぷいっとそっぽ向くが、少し半笑い。案外我が娘、押しに弱いと見た! 我が家のチョロイン爆誕だ~~‼


「いいの? パパの誘い断っても?」

「ぱ、パパ⁉ えっ、お父さん、私だよ? 沙希? あの……ごめん、なんか誰かと間違えてない? そのパパ活的な……」

 ごくりと沙希は生唾を飲み込む。ふふふっ、完全に親父のペースだな!


「そう、パパ活。沙希のお父さんとしての立派なパパ活! 世界に誇れるパパ活中だ!」

 ふんぞり返る。西崎海斗。年齢の割にイケメン。ゆえにどこかスカしていて、娘の親友と、あんなことこんなことしてるクセして、被害者ヅラしやがる。

 なので、今日からイケメン卒業します!


「あの……お父さん。たぶん、パパ活は世界に誇れないと思うよ? あと、あんましよそで言わないでね、パパ活してるなんて。お父さんが思ってるパパ活と世間のパパ活、エグいくらい別物だからね?」

 よし! 注意された! これで「お父さん放っといたら大変!」って意識改革に成功!


「お父さん?」

「パパと呼ぶまで返事しません!」

「えぇ~~っ、ごめん、このノリちょいしんどいかも……」

 あきれられた。でもいい、親子関係は親父があきれられてナンボだ!

 しかし、暴走ばかりではさすがにしんどい。少しは真面目な話もしないと。


「じゃあさぁ、もしよ? もし……パパって呼んだらその……聞きにくい事話してくれる?」

 おい……パパ呼び来そうじゃね? 原作では眉間に皺寄せてるあの沙希がだよ?

 やっぱ、我が家のチョロイン最高~~!


「いいよ、なんでも聞いてくれ沙希っち」

「いや、変な呼び方急にされたら逆に何も聞けない……じゃあね、さっきパパ……あっ、もう‼ つい、釣られて言っちゃったじゃない‼ もうばかぁ……」

 聞きました、奥さん? ウチの沙希ちゃんひらがなで「もうばかぁ……」って!

 これ、わかります? もうこれ完全にデレです! 恋人に使う感じの表現‼


「ほら、言いたいことあるなら言いなさい!」

「なに急にガミガミオヤジなの?」

「いや、そういうのやってみたいなーって」

「なにコント? そういうのよそでやってよ!」


「えっ、いいの? じゃあ……『プルルルル……プルルルル、あっ、マミちゃん? ! 沙希の許可出たからいまから会える?』みたいな?」


「いや、全然笑えないって! えっ、まさかネタで乗り切ろうとしてる? 無理無理! 確かに!『よそでやって』とは言いました! よそってマミのとこじゃないよ?」

「いや、そんなことマジレスされても……パパ引いちゃう」

「いや、そこ‼ お父さん? ちょいちょい若者言葉ぶっこむけど……気のせい? マミの影が見え隠れするって! ほら! あからさまに目を逸らさないで! そういう小ネタやめよ? 気になるし!」

 沙希は肩でゼイゼイ息をしてる。よし、こんな沙希は原作には存在しない。そしてオレこと西崎海斗は、もはや別人だ。


「気になるなら、まずは待ち受けの写真!」

「だから恥ずかしいって!」

「いいよ、じゃあ……マミちゃんに頼むから」

「お父さん! もう限界突破級のギリギリのネタ! わかった! 降参‼ 降参します、待ち受けでもなんでもどーぞ、もうばかぁ……」

 おいおい、今日2回目のデレからの!「もうばかぁ……」いただきました! 

 だがしかし、我が家のチョロイン。押せばなんでもしちゃうんじゃない?疑惑。

 父親としてここはビシッとしつけないと、女の子なんだからこの先危険は山のようにある。


「こんな感じでいい?」

 オレはスマホを構え、愛娘のベストショットを撮りまくる。

「いいよ、いいよ、沙希ちゃん、いい! こっち向いて! よしサイコー! 少し休憩しようか?」


「えっ、休憩してまた撮るの? 100枚くらい撮ってない?」

「んん……なんかでも……違うんだよなぁ」

「違うの? なにが?」

「うん……こう、溢れる何か……パッションみたいな?」

「パッション⁉ 情熱ね? なんかインチキ臭いグラビヤの写真家みたい……」

「そうだそれだ!」

「それって?」

「グラビヤだよ、グラビヤ⁉ 沙希ちゃん! 1枚脱ごうか?」


「へっ⁉ お父さん⁉ お父さんまさか、娘のヌード写真撮ろうとしてない⁉ ヤダよ、そんな成長記録って! なによ、『その手があった!』みたいに手を叩く感じ……ないからね、ヘアヌードなんて! あっ、お父さんヘアヌードまで言ってないし……でも、絶対の絶対、ない! そういうのは……そう! マミに頼みなよって『その手があったか』みたいなのやめて! もうごめんって! 降参~~っ!」

 こうしてエ○な親子撮影会が続くのであった。

 いや、ごめん。続かないみたいです。




 


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JKの娘の友達とエッチな関係になる父親に転生したが、明らかに娘の方がかわいいので溺愛します。 アサガキタ @sazanami023

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