第2話 美しき星の影

 北の大地に、運命の歯車が軋む音が響く。

 北斗署での生活にも慣れ始めた日向隼人だったが、ある事件の捜査中に、彼の「北斗」としての魂を激しく揺さぶる男と遭遇することになる。

​ 北斗市郊外、セメント工場の廃墟。そこは、道南一帯を支配する広域暴力団の武器取引現場だというタレコミがあった。日向は一人、雪を蹴立てて現場へと潜入する。

​ 凍てつく空気の中、男たちの怒号が響く。だが、その中心に立つ一人の男を見た瞬間、日向の動きが止まった。

​「……レイ……なのか?」

​ そこにいたのは、中学時代に唯一、イジメられていた日向に手を差し伸べてくれた親友、みなみだった。

 切れ長の瞳、銀色に輝く長い髪をなびかせ、冬の月光を浴びて立つその姿は、日向がバイブルとする聖典の登場人物、「義星のレイ」**に生き写しだった。

​ 南は、かつて日向と共に格闘技を志した男だった。しかし、ある悲劇をきっかけに表舞台から姿を消し、今では「南斗なんと」と噂される暗殺術の使い手として、裏社会の用心棒に身を落としていた。

​「久しぶりだな、隼人。その筋肉……仕上げてきたようだな」

​ 南の声は、氷のように冷たく、しかしどこか懐かしさを孕んでいた。彼は指先を鋭く立て、空中に見えない軌跡を描く。

​「だが、お前の『北斗』では、俺の『南斗水鳥拳』――いや、この現代の刃はかわせない」

​ 南の周囲には、日向が追っていた連続強盗グループの死体が転がっていた。彼もまた、独自の目的で「復讐の連鎖」に身を投じていたのだ。彼が狙っているのは、かつて自分たちの夢を壊し、日向をイジメ抜いた主犯格が、今やこの街の政財界を操る黒幕となっている事実だった。

​「南、行かせねえ。お前を人殺しにはさせない」

​日向はコートを脱ぎ捨て、マイナス15度の寒気の中に鋼鉄の肉体を晒した。筋肉が怒張し、血管が地図のように浮かび上がる。

​「ならば力で示せ。俺を止められるのは、お前の執念だけだ」

​ 二人の間に火花が散る。日向は、現場にあった重量100キロを超えるコンクリートの塊を、筋トレのスクワットのように持ち上げ、威圧するように地面に叩きつけた。地響きが鳴る。

​「俺の筋肉は、あの日、お前がくれた勇気でできている。お前を救うために、俺は35年間、自分を追い込んできたんだ!」

​ レイ似の男、南の瞳に一瞬の迷いが走る。しかし、彼は音もなく地を蹴り、鋭い指先を日向の頸動脈へと突き出した。

 ■ 登場人物:みなみ

​ 特徴: 日向の中学時代の親友。整った顔立ちと銀髪が「レイ」を彷彿とさせる。

​ 技術: 独自に昇華させた格闘術を用い、真空波で相手を切り刻むような攻撃を得意とする。

​ 目的: 日向を絶望させた「過去の亡霊」たちを一人ずつ狩ること。

​ 日向はこの「レイ似の親友」と拳で語り合い、連鎖を止めることができるのでしょうか。それとも、さらなる**「世紀末的な黒幕」**が登場しますか?

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