第6話『未知の味』

 新湊大橋を降り、海王丸の係留された公園。海王丸パークを過ぎて、新湊の街を目指す。

 途中、踏み切りが見えて、一時停止すると、警報が鳴り、遮断機が下りた。

 すると、2両編成の路面電車が通り過ぎていった。

「クマちゃん、アレは?」

「万葉線。

新湊市と高岡市を結ぶ、トラムだよ」

 わたしの質問に即答のクマちゃん。予習の成果。

 しばらく、海沿いを走って、内陸に入ると、街中に入った。道沿いにお寿司屋さんの登りが上がっている、チラッと見ると、老舗っぽい店構え。そこから少し進むと、またお寿司屋さんが見えた。

「さすが漁港の街、新湊。

街中にこんなにお寿司屋さんがあるんだね」

「そろそろ、お目当ての店に着くよ」

 クマちゃんに言われ、カーナビを見ると、ゴールはすぐそこだった。

 到着。

 今日のお目当てのお店。

『割烹 かわぐち』

 お店の隣は、さっきの万葉線の乗口になっていた。お店の前を通り過ぎ、踏み切りを渡ってすぐのとこにある駐車場に車を停める。

 すると、チンチンと警報が鳴り、乗口に路面電車が停車した。2両編成の青い車体。

 ん?

「クマちゃん、アレ!

ドラえもんだ!!」

 ソレは、特別車両のドラえもん号だった。青い車体。出入り口はピンク色で、『どこでもドア』を模していた。

「ね、クマちゃん。

わたし、アレ乗ってみたいな!」

「うん。

明日、アレに乗って、観光する予定だよ」

 さすがはクマクマトラベル。

 狸の好みをよくわかっている。

 わたしはクマちゃんの頭を、小さい子を撫でるように撫で撫でした。クマちゃんはご満悦な顔。

 そう、わたしはクマを手なずける狸。

 さ、お楽しみはこれからだ。

 思わず、古い映画の名セリフが頭に浮かぶ。

 『未知の味』との対面だ。


 第7話へ続く

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【お題フェス】『未知の味』 宮本 賢治 @4030965

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