第3章:秋の話

夏の光が少しずつ柔らかくなり、森の風も涼しさを帯びてきました。


メイは相変わらず、巣の仲間たちと一緒に、食料をせっせと運び、

巣の中を整えていました。

「冬が来る前に、しっかり蓄えなくちゃ」

メイは小さな胸を張ってつぶやきます。


その頃も、キリギリス達は、森の奥で歌っていました。


けれど、夏よりもその歌声に少し元気がないように感じたメイは、

またリクを訪ねる事にしました。


夏よりも少しくたびれた感じのリクを見つけたメイは

「ねぇ、なんか元気がないみたいだけど、大丈夫?」

と訪ねました。


「うん、これまで沢山のメスに僕の子どもを産んでもらえることになったよ。

 結婚する時、僕の体で作った贈り物をメスにプレゼントするんだけど…

 あと2、3人とは結婚できそうなんだ。

 ちょっと疲れて来たけど、頑張らないとね」

と、薄く笑って答えました。


メイは

「もうすぐ冬が来るから、しっかり食べて、体力をつけておかないと。

 冬のご飯も集めておいた方がいいんじゃないの?」


「冬?冬って何?知らないなぁ」

リクは首をかしげます。


メイは絶句しました。

「冬はね…凄く寒くて、食べ物も少なくなる季節。

 準備をしないと生き残れないの」


「…知らなかったなぁ。そんな季節があるんだね。

 僕らの命は短いから知らなかったよ。

 でも、僕らはそれでいいんだ。

 僕は、今できることを全力でやるだけさ」


にこやかに答えるリクを見ながら、メイは感慨深げに頷きました。


アリとキリギリス、

それぞれの生き方は違うけれど、どちらも必死に、懸命に今を生きている。


メイは胸の奥で小さく誓いました。

「私も、自分の使命を全うしなきゃ…」


森は秋の匂いで満ち、光と影がゆらゆらと揺れていました。



つづく~第四章へ~



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