変化

 そして、肌寒さを感じる二月のはじめに僕と遥は、学校の一室で理事長である遥の父親と向き合っていた。


「……これ以上、隠し通しながらの生活は難しいです」


 遥はきっぱりと言い切りながらも、表情やしぐさでは悔しさをにじませていた。遥は何も悪くないというのに。

 多少のトラブルがありながらも、女性だということがバレることはなく過ごして来たが、年を明けた一月ごろから遥に変化が訪れた。

 女性だということを隠していたことに反発するかのように、急激に身体が女性らしさを主張し始めたのだ。突然の変化に、遥は困惑しながらも服装を工夫したりなどをして乗り越えてきたが、日に日にごまかしもきかなくなってきた。


「そうか。遥、学園生活はどうだった」

「守が一生懸命サポートしてくれたおかげで、とても楽しく過ごすことが出来ました。クラスメイトもとても面白い人ばかりで。――とても良い思い出になりました」

「守くんはどうだい」

「僕にとってもとても楽しい、特別な日々でした」


 もともと遥とは中学でお別れだと思っていたから。いびつながらも一年間共に過ごせただけでも、僕はとても幸せだったと思う。


「なるほど。あとはクラスメイトということか」


 あごに手を当て、何か真剣な表情をしている理事長。

 クラスメイトにも遥が転校することを伝えると言うことだろうか。実は女性でしたということまで伝えたりはしないと思うけれど。このおじさんは、何を言い出すか分からないからなあ。


「明日は確か……午前中で授業が終わりだったね」

「は、はい」

「守くん、うちの娘を助けてくれてありがとう。まあ、明日を楽しみにしておきたまえ」


 理事長は、ご機嫌な様子で僕の方をポンポンと叩いて労ってくれた。

 けれど、明日何をするつもりなんだろう。僕と遥は顔を見合わせて、不思議な気分のまま翌日を迎えることになった。

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