第五章 心灯
日常だった街の景色はもう遠く、総一郎の視界には荒れた戦場だけが広がっていた。
硝煙と轟音、叫び声の中で、心の中はまるで嵐のように渦巻いている。
あの貸本屋で選んだ一冊の本が、非日常の救いとなっていた。
日常の温もりの象徴であり、心の拠り所でもある。
敵が迫り、激しい攻防戦が目の前で繰り広げられる。
手には武器を握りしめ、心は苛立ちと焦りで揺れる。
それでも、ふと本の存在を思い出すと、少しだけ自分を取り戻せる気がした。
「おゆう……」
名前は口にせずとも、胸の奥で響く。
彼女が選んでくれた一冊が、戦場の凄惨な現実を少しだけ和らげる。
仲間の叫び、爆音、炎――すべてが混ざり合う中で、総一郎は胸に抱きしめながら前へ進む。
過酷な戦いの中でも、この小さな温もりが、自分を保つ唯一の支えだった。
激しい攻防の中、何度も倒れそうになりながらも、総一郎は歩みを止めない。
胸の奥にある思いが、文字通り彼を前に押し出していた。
あの本と、おゆうの気配を胸に刻み込んで――。
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