第11話 夜明け
しかし、その激痛と混乱の最中、彼女の腹の底から、今まで感じたことのない微かな、しかし確かな鼓動が伝わってきた。
その鼓動は、真祖の重い思念とは全く違う、純粋で、温かい、新しい生命のサインだった。
白雪姫は、震える手でお腹に触れた。彼女を蘇らせた王子の、あの「毒の口づけ」は、単なる吸血鬼化の呪いではなかった。それは、真祖の血を引く者だけが持つ、闇と光の血を融合させる「受胎の儀式」でもあったのだ。
七つの王を狩り、真祖の魂を吸収した今、彼女の体は、闇の頂点である真祖の力を受け継ぐと同時に、新たな生命を育む器となっていた。
彼女は、銀の短剣を取り落とした。その手には、世界を滅ぼす真祖の力と、世界を繋ぐ新しい命の温もりが宿っている。
白雪姫の紅い瞳から、もう涙は流れなかった。彼女は立ち上がった。
彼女の贖罪の旅は終わった。だが、真祖の力を宿した母としての旅が、今、始まったのだ。
原罪の女王(クイーン・オブ・プライマル・シン) 原忠広 @hara893
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます