第3話 夢が同じ場所に収束していく
しばらくすると、夢の舞台が似てきた。死者たちは、違う人生を語っているはずなのに、話の途中で必ず同じ風景に辿り着いた。
川。ベンチ。夕方。
最初は偶然だと思った。偶然という言葉は便利だ。だが偶然が何度も続くと、偶然という言葉は薄くなる。薄くなると、別の言葉が必要になる。僕は別の言葉を見つけなかった。
「ここ、見覚えある?」
ある死者が僕に聞いた。
「僕が聞きたい」
「そうだよな」
死者は笑った。笑いは軽かった。軽い笑いは、その場の意味を増やさない。
僕はノートに、同じ単語を何度も書いた。川。ベンチ。夕方。書けば書くほど、それらの単語は物としての輪郭を持ち始めた。輪郭を持つと、夢の断片は少しだけ重くなる。重くなると、僕は書く速度を落とした。
女性は何も言わなかった。言わないことが、彼女の仕事なのかもしれないと思ったが、結論は出さなかった。
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