第2話 さ。いつもの。いきますか

 これから本物だけが生き残る時代がやって来る、と。テレビのコメンテーターが話していた。ならば真っ先に死ぬのは現在進行形でしたり顔にて話しているコメンテーターではないのかと思う。肩書だけの人物評価や数字だけの実績評価なんてのは幾らでも水増し出来るし嵩増しだって可能だ。現にコメンテーターが話している内容を抽出すれば“私の出版物を買ってね”に集約されていたし収束されていたし、討論も口論も販売促進物であるとする商魂の逞しさだけは認めようとは思うが商魂しか存在しないような人間が本物なワケがない。だからボクは『この人、死ぬんだな』と認識した。認識したし認知した。認知したし認定した。認定したし設定した。“これから死ぬのであろう偽者カテゴリ”にいの一番に入った。


 そしたら死んだのだ。

 証明が天井から落ちて来て。

 脳天を直撃。

 画面は慌しく右往左往した後に可愛いワンちゃんがペコペコと頭を下げる絵へ。

 暫くお待ちください、の文字と共に。


 幾らなんでも死体が現れるのが早過ぎやしないか。ボクは食べていた朝食のウインナーを口に運ぶ事さえ忘れて唖然としていた。ミステリは早めに死体を用意しなさいとはいうけれど、朝起きて飯食ってる最中に事件発生では構えるも備えるもクソもない。

 まあ、まだ事件だと決まったわけではないし。なんなら事故の可能性のほうが高いわけだが。

 事故?

 あんなピンポイントで脳天に直撃が?

 色んな出ちゃいけないお汁出てたし。

 事故な筈がない。

 あれは狙って落としている。

 緻密かどうかは解らないし綿密かどうかも知る術はないが、少なくとも精密に狙っての殺人だった。頭蓋骨骨折だけで済むとは思えない。出ちゃいけないお汁の他に、出ちゃいけない眼球が出てたし。

 朝からホラーは結構ダメージが大きいのだ。一日が嫌になる。嫌じゃない一日があったのかってそれはまた別の問題だしボクの匙加減一つなわけだが。

 しかし困った。

 テレビの中での殺人事件。

 解決のしようがない。

 名探偵事務所の助手として、なんとかするべきなのだろうが。なんとも出来ねえし。なんともならねえ。幸いにも事件は会議室で起きてはいない。青島刑事が血圧を上げる必要はない。けれど事件は有機ELの中で起きている。青島刑事の代わりに、ボクの血圧が上がるシチュエーションだった。

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