それ、一升瓶につき。ご取り扱いに注意ください

はすみらいと

それ、一升瓶につき。ご取り扱いに注意ください

 それとはじめて出会ったのはいつの頃だったか、思い出せない。


 特定の形を持たないらしい、見る度に形や色を変えてみせた。それの鳴き声もとい話す言葉は「石」、「ビン」。


 少しして、これを自由研究の対象にしようと、思い至った。


 どうやら、餌は不要であるようだ。性別という概念があるのかは不明。他に同じような個体がいるのかもわからない。


 ──そもそも生き物なのだろうか?


 最初に生じた疑念はそれだった。果たして、何も食べずに活動できる生き物なんているのか。ほんとのところ、特定の形や色を持たないことも不思議で仕方なかった。


 ──どういう理屈なんだろう。


 純粋に抱いた疑問。全くもって、検討がつかない。



 

 そのようにして、数日は簡単に過ぎていった。


 それは新しく発した言葉は「ドア」である。


 どういう基準で覚えるのかは、またしても不明。物質の名称を覚えている、今現在推測するならそういう結論。


 「石」「ビン」「ドア」、唯一の共通点は物質。あとはひらがなやカタカナで表記すると、2文字であること。


 なんの役にもたたない情報、この上ない。ああ、クソくらえ。

 

 そして変化する形や色には、特段、法則性はない。何かしら法則性があれば解明することができるかもしれない、というに。



 

 経過、数日、数週間⋯⋯。


 それは人の形をなした。

 

「石 ビン ドア」


 確かにそう口にした。



 

 ああ、そうか。思い違いをしていたのだ。


「石 ビン ドア」


 これは、ひとつの文章だ。

 

 文字を書き記し発音している最中に気づく。

 

 単体では意味をなさない。そして、聞き取りする上で、発音の近いものを当てはめていたせいで、全くもって検討違いだったわけだ。


 最初から答えはそこにあったというに。


 事実を前にして、総毛立つ。と、同時に興味がもたげる。どういう原理なんだろう。


 

 

 ──自分はどうなってしまうのだろうか?

 


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