第5話・ペアを求めて
教室から出た俺は、糖分を求めて自販機でココアを買った。
桜が咲く暖かさだが、まだまだホットココアは美味い。ほっとする時間を学外のベンチで過ごしたのち、学習エリアを抜け、再び校門前に来ていた。
案の定、あの掲示板は健在だった。俺と同じことを考えているのか、ちらほら一年生と思われる生徒もいて、写真をぱしゃぱしゃと撮っていた。
それにならい、スマホを取り出す。今後のことも考えて、全クラス分撮影した。
前々期試験。
まさか、入学してすぐにこんな試練が待ち受けているとは思わなかった。
正直、俺にはSNSで有名になりたいという欲はない。
ただ、この学園の設備と、完全に外部から疎外された環境に惹かれて入学しただけだ。
中学卒業と同時に、なんの不自由もない生活を、実家の助けを借りずに送ろうと思えば、選択肢は限られてくる。
ここで放り出されて仕舞えば、実家に連れ戻されることは必須である。それだけは、何がなんでも避けなくてはいけない……。
ブルリと背中が震えた瞬間、
「あ、あの」
ブルブルと、俺よりもよほど震えた手が、急に肩を叩いてきた。
「な、何⁉︎」
驚いて、飛び退く様に振り返る。すると、見覚えのない少女がそこにいた。
「あ、あの! は、初めまして! 同じクラスの星影さ、紗雪といいます」
どこか舌足らずな口調でたどたどしくそういうと、少女はぺこりとお辞儀をした。艶やかな紺色の髪を、左右それぞれで三つ編みにしている。顔をあげると、不安そうな紺色の瞳がこちらを見上げていた。身長が低く、小柄な少女だ。
「えっと、今、掲示板を撮影していましたけど……な、なんでそれを撮っているのかな、というのが気になりまして」
ちらちらと、こちらを伺うように目線を合わせては外してくる。優等生そうな髪型だが、注意を受けそうなほど前髪が長いな……。
「なんでと言われましても……。ほら、この掲示板さ」
今朝気づいたことを説明する。すると、星影紗雪は「な、なるほど」と感心したような声を上げた。
「そ、そっか、これ、フォロワー数なんですね……。確かに、入学した時は、これくらいの人数だったかも……」
その言葉に、Dクラスの名簿を上から順に確認した。いた。星影紗雪。フォロワー21人。そのすぐ下を確認すると、フォロワー0人だった。
「…………ちなみに、今は何人なの?」
「え、えっと…………17人です」
4人減ってるやないかーい!
っと心の叫びを抑え込み、無意味ににっこりと笑った。笑いかけられた星影紗雪も、頼りない笑顔を浮かべる。
そのまま、へへっ、へへへへっと乾いた笑みを浮かべた。
気まずい。
「…………わ、私、ビリだったんですね」
やがてポツリと、そう言った。
ずぅぅぅんと、わかりやすいくらい肩を凹ませている。うん、そうだよね。そういうことだよね。気まずい。
「ま、まあ、これからこれから」
「真夜さんは……フォロワー0人かぁ。これからなんですね、これから……」
星影紗雪はその場にうずくまってしまった。気まずい。女子がしゃがみ込む様子に、また周囲の注目を集めだしてるし。
「とりあえずさ、写真撮ったしクラスに戻らない?」
「そ、そうですね」
星影紗雪はよろよろと立ち上がり、
「ご一緒して良いんですか?」
「うん。あ。あと、」
落ち込んでいる少女に突然こんなことを頼んで良いのか、躊躇する。それでも、後から変えるのは面倒だろうし、言い出すタイミングを計りかねるから、最初に言ってしまった方が良いだろう。
「俺、苗字が嫌いでさ。下の名前で呼んでくれると助かる」
「あ……。そ、そうなんですね。わかりました! あ、あの、わ、私も下の名前でも良いですよ」
「分かったよ星影さん」
んん??? と星影紗雪は不思議そうな顔をするが、下の名前で呼び合ってあらぬ誤解を招くのは避けたい。
幸い、星影紗雪には苗字に対する強いこだわりはないらしい。こうして、星影さんと成り行きで一緒に歩き始めた。
「……ところで、掲示板に用がないのに、なんであそこにいたの?」
教室へと戻る途中、そう切り出した。
雑談というよりも、探りの一手だ。
「え、えっとね? 実は、その、えっと、えーーーっと…………な、中道くん……うう、男子の名前って、よ、呼ぶの難しいね」
そんなに言いだし辛い理由があるのか? と思ったが、どうやら俺の下の名前をいうのが照れ臭かったらしい。
「そ、その、中道くんのあとを追いかけていったんだ。わ、私、前々期試験の説明を受けた時から不安で……。だ、だって、みんなすごそうだし……私よりずっと、自信がありそうで……。で、でも、そんな中でも一番すごそうだったのが……中道くんで」
「俺が?」
「う、うん! だ、だって、あのみゅげさんが組もうって……。この人はすごい人に違いないって、そう思って……! そんな中道くんが、何か考えがありそうな顔で出ていったから、もしかしたら、試験のヒントが掴めるかもって」
「なるほどな……」
目の付け所は悪くないし、行動力はある。しかし、名前と共に掲示された数字がフォロワー数だと分からなかったり、優等生然とした見た目に反して、頭はあまり良くなさそうな少女だった。
……………………。
「なあ、俺と勝負しないか?」
「ええ⁉︎ な、中道くんとは、や、やだよ」
即答で拒否された。
だが、星影紗雪。ゴリ押しすればいけそうなタイプの予感がする。こういう子が一番、新興宗教では落としやすいのだ。
そう思い、交渉のカードを切ろうとするが、
「だ、だって、中道くんすごそうだし! そ、それに、もう、相手は決まっていて……」
「そうなのか? 早いな」
「う、うん。実は、中道くんを追いかけようって思った時に、クラスの子に声をかけてもらって……。も、もうちょっと迷いたかったんだけど、押し切られちゃった」
「……ゴリ押しされ済みだったか……」
やはり、そういうタイプだったらしい。予想が当たった嬉しさを噛み締めつつ、己の現状を冷静に分析し直す。
俺がみゅげと絡んだことで、星影紗雪のように考える生徒が他にも出てきているかもしれない。もしかしたら、みゅげの狙いはそれか——?
自分を知らず、恥をかかされた仕返しに、競争相手を見つけにくくしたのだ。
そうなると、Dクラスから競争相手を探すより、一つ上、Cクラスから探した方が良いかもしれない。
そんな戦略をつらつら考えているときだった。
「あ、あの!」
「うおっ」
突然、星影紗雪が大声を上げた。隣に視線を下げると、彼女は俺を見上げている。
前髪で隠れがちな瞳がはっきりと見えた。紺色の瞳の奥に、固い決意が感じられる。
「よ、よかったら……なんだけど、アドバイス貰えないかなぁ⁉︎」
息が詰まった。
反射的に断ろうとしたが、唇が動かない。
俺には、アドバイスできることなんてねぇよ。そう切り捨てるべきなのは分かっていた。けれど、必死に何かを頼むその様子が、長い前髪で瞳を隠したその姿と雰囲気が、懐かしい過去を思い出させていた。
「………………まあ、できる範囲なら」
「本当⁉︎ ありがとう」
出会ってから初めて浮かべる、笑顔だった。儚く、純粋で、それこそ鈴蘭のような笑みだ。それでも、心の底から喜んでいるということは、確かに分かる。
そんな笑顔すら、さっき思い浮かべた幼馴染に似ているような気がした。
…………彼女は今頃どこで、何をしているのだろう。
連想で父親の顔まで思い出してしまって、頭の中でボコスカに殴りつけておく。
「あ! こ、コンサル料とか、かかるかなぁ……? わ、私、あんまりポイント持っていないんだけど……」
「いや、別にいいよ。本職ってわけじゃないし、どこまでコミットできるかわからんしな。入学祝い金、だよな? 3万ポイント入ってたけど」
「え? 私は3万21ポイントだよ?」
「……フォロワー数だな、それは」
「ええ⁉︎ あ、本当だ。掲示板に書いてあった数と同じだね」
なるほど。この学園のやり口がだんだんとわかり始めてきた。フォロワー至上主義。流石はSNS学園だな。
「っていうことは、みゅげさんは、13万円ぐらい貰ってるのかな? す、すごいね」
「……そうだな」
実際、3万というのも一律かは怪しいところだ。フォロワー数でクラスを分けたのだから、その時点でベースのポイント数も違う可能性が高い。
「け、掲示板で思い出したんだけど」
おずおずと申し訳なさそうな顔をして、星影紗雪がポケットからスマホを取り出した。
「さ、さっき掲示板の写真、撮り忘れちゃってた……。こ、これからアドバイスも貰うし、よ、よかったらID交換しない?」
「ああ、そうだな」
ギガチューブのアプリを開き、QRコードで連絡先を交換した。メッセージアプリも使うことはあるが、ギガチューブ一つでSNS発信やメッセージのやり取りができるので便利だ。
送られていたアカウントを、メインの方に登録する。このアカウントでは初めての友達だった。
「えへへ。誰も知り合いがいない高校だったから、ちょっと不安だったけど……友達ができて嬉しいな」
「……俺たちは友達なのか?」
「ええ⁉︎ ま、まあ、そう改めて問い返されますと、そ、その……ちょっと? だいぶ? 違う、かも……? も、もしかして友達じゃなくて、師匠と弟子……みたいな感じですか?」
「……それもおかしい気がするから、そ、の。……星影が良ければ、友達で」
勇気を出し、思い切ってさん付けをやめてみた。
星影紗雪は嫌な顔一つせず、むしろ満面の笑みで、
「............! し、下の名前でも良いんですよ?」
「星影で」
断られたのに、嬉しそうな笑みを浮かべて、スマホの画面を見つめていた。自分の顔など見る気にもなれないが、多分、同じようにニヤついていることだろう。
友達ができたのは、久しぶりだった。
正直、まだ本当に友達と言って良いのかは分からないけれど、少なくとも他人ではないし、知人以上と言って間違いない。
スマホに視線を落とすと、星影のチャンネルが開かれていた。
「秘密の図書室、か……」
トップ画像は、三つ編みおさげの少女の後ろ姿と、図書室と思わしき本棚。夕暮れを狙って撮影したようで、なかなかエモい良い写真だった。
アップされた動画のサムネから察するに、どうやら本紹介系の動画のようだ。
「あ......! そ、その、恥ずかしいから見ないでいただけると……」
「見ないでどうやってアドバイスをするんだ」
「あ、あう! そ、それはその、私がいないところで、ひとおもいに見てやってください……!」
「…………。わかった、後で見ておく。そういえば、星影の競争相手はどんなやつなんだ?」
「え、っと。アカウントはまだ確認していなくて。そ、そうだ。桜木さんともアカウント交換しなくちゃ……」
「桜木さん?」
さっき撮った掲示板の写真を開く。
「う、うん。桜木美亜(さくらぎみあ)ちゃん。すごく可愛い子で……。うう、なんであの子と戦うことにしちゃったんだろ……」
「そうだな。フォロワー数99人。ほぼCクラスの生徒じゃないか」
先ほど撮った掲示板の写真をまとめて星影に送信する。そのとき、Dクラスの掲示板のトップにある、桜木美亜の名前に丸をつけて送った。
星影は俺の送った写真を画面で確認しつつ、
「ほ、ほんとだ……。な、なんでよりによってクラストップの人と……」
どよよよよんと肩を落として、星影が呟く。
「まあ多分、桜木美亜が上手だったんだろうな。掲示板でしっかり、名前と順位を確認していたんだろうよ」
「……それで、実質的にビリの私に?」
悲しいことだが真実なので、こくんとうなづいておく。
掲示された順番で考えれば、星影より下はいくらでもいたが、0フォロワーの人間というのは怖い。
どんなアカウントを立ち上げるか分からないし、どのくらい情熱や才能があるのかも未知数だ。それならば、すでにアカウントを立ち上げている中から最下位を対戦相手に選ぶというのは、かなり優秀な選択だろう。
戦略を決めたら、ほとんど迷わず、すぐに行動に移しているのも賞賛に値する。迷っている時間も、競争相手は行動し、競争相手候補はどんどんと減っていくからだ。
正直、この行動だけで、一筋縄では行かなそうな相手である
どことなく憂鬱な気分のまま、クラスルームに帰還する。
数十分ぶりに訪れた教室は、まばらな空席が目立っていた。廊下から話し声がよく聞こえるため、そちらを覗いてみる。
たくさんの生徒がAクラス、Bクラス側の廊下に溢れていた。どうやら、競争相手の交渉をしているらしい。我らがDクラスの生徒もちらほらと見える。
さまざま白熱したやり取りが交わされているようだが、一際目立っているのが緑髪のリーゼントの男だった。
上着のボタンは全部外して、ワイシャツも緩く、入学1日目にして、制服の着こなし方がロックだ。ただ、上背はしっかりあるようで、様になっていた。
リーゼントの前には、見覚えのない男がいた。リーゼント男とは対極の隙のない制服の着こなしで、紺色の髪を撫で付けている。銀色のフレームの眼鏡が特徴的だ。
「あぁ⁉︎ どーいう意味だよそりゃぁ」
「言ったままの意味だが? 上位クラスの人々に、誰彼構わず声をかけて、VSを組もうとするのは止めてくれ。自分の外見を鏡で見たことはないのか? みんな怖がって、不快な思いをしている」
「んだと? てめーには声かけてねーだろうが。勝手に決めつけてんじゃねぇ」
「決めつける? 話し相手の顔色を見ればわかるさ。気が弱いやつが、脅されたと感じて、VSを組むのも時間の問題だ。そんなことがあってはならない。だから、僕が注意させてもらったんだ」
なるほど。この廊下の騒ぎはそれが原因か。
南野瑠璃から伝えられたルールの一つ。Dクラスの生徒はBクラス以上。Cクラスの生徒は、Aクラス以上と組めればその時点で試験は合格。その特殊ルールでの合格をもぎ取ろうと、生徒たちがクラスの垣根を超えて廊下に集まっていたのだ。
「良い機会だ。Cクラス、Dクラスの生徒は聞いてくれ!!」
シルバーフレームの男が、政治家のように声を張り上げた。廊下中に響き渡る明朗な声で、思わずひきつけられてしまう。
「Aクラス、Bクラス以上の生徒が、君たちと組むのに慎重になるのには理由がある。ぜひ、それを知った上でVSの交渉をして欲しい。
『1WeekVS』の勝敗は、純フォロワー数の増加だ。だが、既にフォロワー数が多い生徒は増加率が低くなりがちになる。
一方、CクラスDクラスの生徒は、僕たちと対戦しているというだけで、僕たちのフォロワーの注目を集める。
それに、新規でアカウントを作る場合や、始めたばかりの場合は、アルゴリズムに優遇されて、フォロワー外に拡散されやすい。
結果、フォロワー数が少ないからこそ、増加率は高くなる可能性があるということだ」
シルバーフレームの男は、そこでメガネを片手で調整し直し、改めて、緑髪リーゼントと向き合った。
「次に、僕らはコンテンツの質やブランド価値を大事にしている。実質的に動画内でコラボする必要はないとはいえ、対戦相手として学園が広報した相手のコンテンツの質が低いとなれば、そんな相手を選んだ僕たちの評価まで下がる可能性が高い」
「だとコラァ⁉︎」
「少なくとも君のように、品のない相手は選びたくないね」
「はいっ」
びしっと、一人の生徒が手を挙げた。「はいそこの君」と、まるで教師のようにシルバーフレームの男が指し示す。
「それでも、Dクラスの生徒はこの試験に負けたら退学なのよ? Bクラス、Aクラスの生徒がみんなDクラスと組んでくれれば、平和じゃないかしら?」
「なるほど、良い質問だね」
パチンと指を鳴らして男が言った。質問をした、どこかお嬢様然とした少女は不服そうだ。そんな少女の様子には構わずに、
「さっきも言った通り、フォロワーの増加率は、フォロワーが少ない方が有利になる。つまり、クラスが上でも負ける可能性があるってことだ。
負けたらクラスは降格。こんな試験を入学初日に仕掛けてくるような学校だ。これからも足切りはあると考えて間違い無い。
Bクラス、Cクラス、Dクラス、退学と、そんなリスクを背負ってまで、人助けをする義理はないね」
「長々喋ってるけど、要するに負けるのが怖ぇぇってことじゃねぇか!」
緑髪リーゼントの咆哮に、今まで理路整然と喋っていたシルバーフレームの男の額に、青筋が走った。
「……怖くはないが?」
「ほう。じゃあ俺と組もうぜ」
「……さっきも言っただろう。君のような品のない男と組んで、自らの価値を貶めたくはない、と」
「あ〜〜、はいはい、やっぱり怖いのね。分かった分かった、もう誘わねえよ、テメーみてぇなチキン眼鏡はな」
「なんだと⁉︎ 眼鏡は関係ないだろ!」
怒るとこそこなんだ。
緑髪リーゼントはこういった煽りが慣れているらしく、
「関係あるだろ。テメーの顔面の面積の5割を占めてるじゃねぇか。本体もダサけやメガネもダセェな。なんだその色。塗り忘れか。その古臭い形、ひいひいひいひいおじいちゃんの遺品かよ?」
「ぐっ……! 分かった、組んでやる。完膚なきまでに叩き潰してやるよ」
「言ったな⁉︎ 男に二言はないな⁉︎」
今までの煽り顔から一転、満面の笑みを浮かべて、リーゼント男はシルバーフレームと肩を組んだ。そのままずるずると、廊下を引きずっていく。おそらく、職員室にVS申請に向かうのだろう。
「おいなにするんだやめろ」と手を振り払おうともがいているが、体格差がそれを許さない。
後に残された生徒たちは、Aクラス、Bクラスの生徒がはけていくにつれて、次第に解散の流れとなった。
シルバーフレームの男の演説には、確かな説得力があった。本人の行動はともなっていなかったけれど、それも踏まえて、残されたものたちへの教訓になったらしい。合掌。
「……う、上のクラスの生徒と組むのは難しそうだね。……私、もう組んじゃったから関係ないけど……」
「そうだな」
それは、ルールを聞いた時から考えていたことではあった。理由はシルバーフレームとほぼ同じだ。あえていうなら、今後の発信活動にとって有益な相手と関係を結びたいから、AクラスBクラスの生徒は、CやDからは選ばないのではないか、という考えもあった。
すでにそこそこのフォロワー数を抱えるインフルエンサーなら、自身のギガチューブのチャンネル評価こそが第一であって、この学園の地位など二の次のはずだからだ。
南野瑠璃が言い残した、「そんなに甘くないと思うけど」という一言からも、過去に上位クラスとVSを組んだことにより試験に合格した生徒は多くないことが伺えた。
「俺も、うかうかしていられないな。早く競争相手を見つけないと」
「そ、そうだよね。え、と。とりあえず、私は桜木さんとID交換してくるね」
ひらりと手を振る星影に、手を振り返した。初めての友達の後ろ姿を、ほのぼのとした気持ちでうかがっていると、物陰から視線を感じた。
振り返ると、Aクラスの教室から、鈴蘭が顔を覗かせて、こちらを見ていた。視線が合うと、慌てた様子で戻っていく。
…………なんなんだ。
俺が競争相手選びに難航している様子を、物陰からうかがって楽しもうという算段か?
だが、思い通りにはいかない。
こちらだって、この学園を追い出されるわけには行かないのだ。
「やってやる」
決意を固め、Cクラスへと足を踏み入れた。
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