【触れてはならないもの】
くれは
CASE1 【星の箱】
ギリシャ神話に由来する【パンドラの箱】なるものがある。日本の昔ばなしなんかにある浦島太郎みたいなものだ。
『触れてはならないもの』『開けてはいけないもの』そんなおとぎ話のようなモノが現代日本にあるとしたら?
それは、災いを引き起こすのか、伝染病を蔓延させるのか――それとも。
最後に希望が残る?
そんなものは迷信だ。信じる者は救われる……なんて言葉すら、信じたところで救われる者は少数だろう。それは、信じたから救われたのでなく、色んな要素が重なって救われたに過ぎないからだ。
そして、この私は迷信上等! 信じるんじゃなく、好奇心で、ここまで来た!
そう、ここはとある山奥の中――じゃなくて、昔から妖かしの噂や、少し前に流行った祠壊しちゃったー! 事件とか、曰くつきなんて何もない森林公園! つまり、山奥でもなんでもない街の一角!
名前は――『星の箱』
名前の由来は、単純だった。この街には、一度だけ隕石が降ってきた。それがこの公園。
だから、公園の中心部には2メートルほどの階段があって、その頂上に星を模した小さな箱がある。絶対開かない箱……ではなく、開けると星の絵が書いてあった。ただの子供だましだ。
だけど、度胸試しでもある。本来なら危険だから設置されないだろう、縦に長いだけの階段。当然、注意書きもあって子供は絶対登らないようにと書かれている。
実際に登って怪我をしても、責任は取らないと言う強気だ。
私も度胸試しのごとく登ってみる。その前に一つだけ。高所恐怖症の貴方は止めた方がいい。
風が吹いただけで体が持っていかれそうになる感覚は恐怖だった……。
「ふっふっふ……私は登頂に成功した!」
まったくもって自慢にならないだろうことを意気揚々と高らかに叫ぶ。決して痛い女ではない。
朝早くということもあって、街は静かでカーカーとカラスが鳴いているだけ。
行く場所が複数だったから、早寝して早起きして頑張った!
健康第一だからね! 偉いなー私。
公園の時計は朝の6時50分を指している。
箱の形は四角くて上の部分が丸みを帯びていて、良くあるRPG風の宝箱だった。素材は腐敗しないよう金属かな……専門家じゃないから詳しくは分からないけど。
意を決することもなく軽く箱の蓋を開ける。他に何か演出があるかと期待したけど、当然何もなかった。
開けた箱は夜空のように黒に青みがかった感じで、箱の底に例の星が描かれている。
「うーん……星の色と形。大きさは、まぁまぁかな」
どこぞの芸術家かと思う感想を述べて蓋を閉めた。
そう、私の戦いはこれからだ。
登山でもよく聞く話だろう……。行きはよいよい帰りは怖い! つまり、地面に足をつけるまでが遠足だ!
「はぁ、はぁ……私はやりきった……偉いよ、私。生きてるって最高ー!」
大げさなのは承知の上で叫ぶ。犬の散歩をしているおじいさんが変な顔をして目をそらしたり、保育所に連れて行くのだろうか、小さな子供を連れた母親が「見ちゃだめよ」なんて、あるあるな台詞を吐いても気にしない。
私の唯一の長所と言ってもいいだろう。
そう、それは――
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【触れてはならないもの】 くれは @kyoukara421hgmel
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