【04】報道番組<モーニングニュース>における、<子ども未来計画>に関する報道(2033年10月20日 木曜日)
(司会
「では本日最初の話題に入りたいと思います。
今年4月1日に人口増加促進法が施行され、国が推し進める子ども未来計画が実質的に始動して既に半年が経過した訳ですが、そんな中で衝撃的な事件が起きました。
まず事件の概要について、柿崎さんから説明してもらいます」
(アシスタント
「はい、承知しました。
昨日午前11時頃、豊島区内にある産婦人科医院から出て来た女性が、二人組の男に襲われるという事件がありました。
この女性は在留資格を持つ東南アジア国籍の方で、妊娠6か月の妊婦さんでした。
女性は医院のスタッフに救助された後、近隣の大病院に救急搬送されましたが、突き飛ばされて路上に倒れた際に腰を強く打った模様で、搬送先の病院に緊急入院されたそうです。
幸い怪我は軽傷で、検査の結果胎児にも影響はなかったようです」
「(鳥飼)柿崎さん、ありがとうございます。
被害者の方が胎児ともども、大事にならなくてよかったと言うしかないですね。
さてこの事件ですが、只の妊婦襲撃事件という訳ではないようです。
襲われた女性はどうやら、子ども未来計画に参加中の代理母と間違われたようなんです」
(政治ジャーナリスト香山徹郎のテロップ)
「実際は代理母じゃなかったんですか?」
「(柿崎)そのようです。
そもそもこの医院は、子ども未来計画の指定医療機関ではないようなんです。
そして被害者は、この病院に通う普通の妊婦さんだったようです。
普通にと言うと、ちょっと表現がおかしいんですけど。
しかし事件を目撃した方の証言によると、二人組は病院から出て来た女性に突然近づいて行って罵声を浴びせたそうなんですね。
その罵声の内容が、どうやら代理母を罵倒するものだったようです」
(『指定医療機関(人口増加促進法での定義):未来児創出ガイドラインに規定する要件を満たし、同ガイドラインに規定する手順に従って未来児創出に必要な精子及び卵子の収拾及び受精、代理母の受胎、代理母及び胎児の健康管理、及び未来児の出産等を適切に実施する医療機関等』のテロップ)
「(香山)つまり犯人はその医院が指定医療機関だと勝手に思い込んで、被害に遭った方を襲ったということなんですね?
それでその二人組は捕まったんですか?」
「(柿崎)いえ、犯人の二人は現場からそのまま逃走した模様で、現在警察が行方を追っているとのことです」
「(鳥飼)ここで大森さんに伺いたいんですけど、今回の事態を受けて、何か対策を講じるような動きが政府にはあるんでしょうか?」
(政治評論家大森昌一郎のテロップ)
「そうですね。
政府としては今回の事件をかなり深刻に捉えていて、総理から子ども未来計画の責任者である時本大臣に、至急の対策をとるよう指示が出ているようです」
「(香山)対策って言っても、ハッキリ言って難しいですよね。
例えば指定医療機関に警官を配置して警備するにしたって、病院から離れた場所で襲われたらどうしようもないし。
かと言って代理母の方一人一人に、警官のガードを付ける訳にも行かないでしょう。
第一次計画では3年間で、10万人の未来児を作ることになってるんですよね
その10万人の代理母一人一人に護衛を付けるなんて、現実的にちょっと無理ですよね」
「(鳥飼)確かにそうですね。
それに今回のように、指定医療機関でもない医院に通う妊婦さんが狙われたら、対処しようがないですからね」
「(香山)今回みたいな暴力沙汰にはなってなくても、最近外国人の妊婦の方に罵声を浴びせるケースが増えて来てると聞きますよね。
これって下手すると、国際問題になり兼ねないですよ。
昨今の日本の外国人排斥の風潮から考えると、こんな事態が起きるのは、事前に予測出来たと思うんですよ。
大森さん。その辺りの政府の認識はどうなんですか?」
「(大森)その点は政府内でも、計画のリスクの一つとして考えられていたようです。
そして実際に今回のような事件が起きたことで、政府内ではかなり問題視されているようですね。
ただ連立与党内の保守派議員の中には、外国人の妊婦を特別扱いするのは不公平じゃないのかという考え方もあるようです」
「(香山)いやいや、ちょっと待って下さい。
それはおかしいでしょう。
日本政府が推し進めている政策のあおりを受けて、今回の被害者のような方が出て来てるんですよね。
だからそんな人たちを保護するのは、日本政府の義務だと思うんですよ。
それを外国人だからとか、特別扱いだとかいうのは、筋違いなんじゃないですか?」
「(大森)確かにその通りなんですけど、保守派の中にはかなり強硬な意見もあるようですね」
「(香山)子ども未来計画については、この番組でも散々議論して来たから、今更蒸し返すつもりはないんですけど。
結局与党内でも、反対意見はあったということですよね。
今頃そういう意見が出てくるということは、与党内の反対意見を抑えて、強行突破した結果なんじゃないですかね」
「(大森)計画が国会審議に掛けられた頃は、与党内でそこまで反対する意見はなかったようなんですよ。
ただ当初予想していなかった、外国人を代理母に起用するという計画の変更があって、それに対する反対意見が党内の保守派から出て来たようなんですよ」
「(香山)外国人に日本人の未来児を生ませるのは、怪しからんというやつですか。
それってネットの中でも増殖してますよね。
僕も取材の意味で、そういうサイトをいくつか覗いてみたんですけど、どれもこれも酷い内容でしたよ。
でもちょっと疑問に思ったんですけど、そもそも代理母として外国の方を起用するなんていうのは機密情報ですよね。
それが何で一般に広がってるんですかね。
おかしいですよね」
「(大森)その辺は私も詳細は知らないんだけど、与党内の噂によると、計画に反対する保守派の議員から漏れたとか」
(香山失笑)
(弁護士
「(島本)大森さん。その議員の方は特定出来てるんですか?
場合によっては機密情報漏洩で、罪になる可能性があると思うんですけど」
「(大森)いや、あくまでも噂で、誰が漏らしたとか、そういう具体的なものではないんですよ」
(香山、再度失笑)
「(鳥飼)はい、議論が白熱してきたところですが、ここで一旦CMに入りたいと思います」
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