「調査依頼は空振りに終わるがガルムが現れた」

ダンジョン五層。


先日の事件以来、一部の騎士たちが詰めていたが、今は大演習のために最小の人数で調査のための拠点が維持されていた。


僕たちは、そこを間借りして、五層以下の階層を調査していく拠点にすることになっている。


先日現れたの岩竜は、正確には岩竜の幼体という事だった。

なぜ現れたのかは継続して調査中で、それは僕たちへの依頼にも含まれていた。


調査を開始して数日、これといった手がかりは何もなく、岩竜ほどの異変らしい異変は一切なかった。


経過の報告書をまとめるために、拠点に戻ってきた僕らを待っていたのは、ガルム達だった。


「よお、アルト。なんでも王城からの指名依頼をうけたそうじゃねえか?」


ガルムとべロス、トロスの三人は拠点の入り口で不敵な笑みを浮かべていた。


「英雄騎士様も、アルトのしながらじゃ、調査だってすすむもんもすすまねえだろ?」


その言葉に、イリスがピクリと反応して、微かに殺気を漏らし始めたことに僕は気づいていた。


「使えねえアルトなんぞより、俺たちの方が調査に向いているぜ。どうだ? ダンジョンの異変とやらの調査に協力してやってもいい」


ガルムがまくし立てて、後ろの二人もしきりに頷いている。


「つーわけで、アルト、お前は帰れ。そこのスカウトと神官は残って手伝え。アルトよりは使えそうだ」


勝手なことを次々に言い放つガルムに、リナとマリエは怒りの表情をあらわにし始めた。

けれど、それを制したのはイリスだった。


「すまないが、ガルムと言ったか? 今回の件は正式にアルトたちに依頼されたものだ。途中での変更はできない。それに――」


イリスの先ほどまで漏れ出ていた殺気はなりを潜め、ガルム達を一瞥する。

ガルム達は、五層に到達するまでの間に、ずいぶんと消耗している様子だった。

泥だらけで、装備も傷だらけ。疲労も色濃く見えていた。

それを見止めたイリスが、冷徹な声色で続ける。


「……今の君たちには、調査をする余裕はなさそうだ」


その言葉に、ガルムの顔がみるみるうちに真っ赤に染まっていく。


「ざけやがって!!」


怒号と共に、ガルムが剣の柄に手をかけた。

同時にべロスとトロスが身構え、僕たち三人も即応態勢をとった。


ただ、イリスだけが冷徹な目でガルム達三人を見下ろすばかりで動く気配がない。

じりじりとガルムがイリスの隙を伺うように距離を詰める。


そのとき、一瞬で五層の空気が張りつめた――


「!?」


「イリス!」


それに気づいた僕とリナ、マリエの三人はすぐさまイリスの側まで駆け寄り、辺りを見回す。


「どうしたあ! 怖気づいたか!?」


ガルム達はこの異変に気付いていないらしく、尚もイリスへの戦闘態勢を解こうとしていなかった。


「まて、今は――」


イリスが言い終わらないうちに、ガルム達後方の岩肌が轟音と共に崩れ落ち、再び岩竜の幼体が、その顔を現した――

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