「イリスからの指名依頼と新パーティの結成」

「なあ、聞いたか? ガルムの奴また失敗したんだってよ」

「そいや最近見ねえな」


 いつものように依頼を取りに行った時、ギルドの隅からそんな話が聞こえてきた。


(ふーん)


 僕にはもう関係ない事だった。


 岩竜の一件依頼、僕たち三人は、英雄騎士イリスが認めた冒険者として少し有名になっていた。

 僕を嘲るようにしていた受付嬢もニコニコ顔で依頼手続きをしてくれる。


 イリスに認められたのは事実だが、それはリナやマリエの存在があってこそだ。


 受付嬢の張り付けたような笑顔を見ながら、それとはまるで別物の二人の笑顔が浮かんだ。


「アルト」


 ギルドを出たところで、イリスが声を掛けてきた。


「やあ、イリス。今日はどうしたんだ?」


 その光景に周りの視線が一斉に集まる。

 イリスは美人だし、強いし、英雄だから、視線が集まるのはわかるけど、僕にも視線が集まるのは少しだけ居心地が悪く感じてしまう。


「今日も依頼か。精がでるな」

「まあね」


 依頼書をちらと見たイリスが、そう言って珍しく考え込むような様子を見せる。


「……頼みがあるんだが、いいか?」

「頼み?」


「ああ、実は前回の件で、さらなるダンジョン調査が必要になったんだが、折悪く大演習の時期と重なって、騎士団から人員が出せない。そこで」

「僕たち? いいのか?」

「ああ、むしろこの間の調書をみて、適任だと判断した。私も同行する」


 この言葉にざわついたのは周囲の方だった。

 イリスからの指名依頼だと騒いでる人さえいた。


(指名依頼……)


「後日、きちんとした形で依頼を出させてもらう。準備はしっかりと頼むぞ」


 イリスはそう言って、僕の肩をポンと叩くと、ざわめく聴衆には目もくれず去っていってしまった。


*


「マジ? 指名依頼? さっすがイリスにゃん。アルにゃんの幼馴染なだけあって、アルにゃんの事わかってるぅ!」


二人が待つ教会に戻った僕は、ギルドでの事を話すと、リナが飛び上がって喜んでいた。


「……ぐへへ、いくらになるかな? イリスにゃんからの依頼ってことは王宮からの直接でしょ……」


「その、大丈夫でしょうか?」


目を金貨に変えているリナの横で、マリエは不安げな様子だ。

先日のこともあるし、無理もない。

でも――


「先日のような危険はそうそうないと思うけど……でも、マリエさんは無理はしないでほしい。マリエさんが残ってくれるなら、リナも僕も帰れる場所がある、ってそう思えるから」


リナもマリエも、白い靄が包んだままだが、この間の事を考えると、加護も万能ではない。

マリエが残るならそれを強く止めることはできなかった。


「いいこと言うね、アルにゃん。イリスにゃんもいるし、そうそう大変なことにはならないとあたしも思う。でも、マリエが残って待っててくれるならそれはそれでいいかにゃあ」


屈託のない笑顔でリナが笑う。

マリエは少し逡巡して、でも、決意を固めたような瞳で、僕をまっすぐに見た。


「いえ――私も行きます。だって……私もパーティメンバーですから」


「おおー、決意の目! じゃあ、パーティ再結成だね!……いや、イリスにゃんが入るから四人のつよつよパーティ新結成だね!」


リナがまた飛び上がって喜んでいた。


こうして僕たち三人は、イリスと共にダンジョンの調査へと向かうことになった。

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