「僕がイリスと同じ技を使えるようになった事」
その轟音に、ガルム達も振り向く。
「岩竜か。丁度いい、英雄騎士様に俺らの力をみせてやるとしようか!」
吐き捨てるように叫んだガルムが、剣を抜き放ち、同時にべロスとトロスがその両隣で身構える。
だが、同時に岩竜が身の毛もよだつような、あの咆哮を放った。
「ぐっ……」
ガルムは持ちこたえたようだったが、ほかの二人は、その方向に腰が抜けたようにしりもちをついていた。
そして同時に、岩竜の方向から無数の魔物たちがこちらへ押し寄せてくるのが見えた。
「まずい、恐慌に陥っている! リナ! 敵のかく乱を、マリエは三人の治療を!」
イリスが叫ぶと同時にリナが魔物の集団へ、マリエがガルム達へと走る。
「ちがう! 俺は!」
「アルト! 前に出るぞ!!」
叫ぶガルムを無視してイリスが駆け出す。
僕もうなずいてその後を追った。
「お前らの攻撃なんか効かないよーっだ!」
リナがカバンからいくつものアイテムを取り出し、押し寄せる魔物の群れへと投げつけた。
白煙と爆発が連鎖し、魔物たちの動きが微かだが鈍る。
「治療終わりました、三人には拠点まで下がるようにいいました!」
既に先頭と接敵していた僕とイリスの元へ、マリエが追い付いた。
リナのかく乱、イリスと僕で敵を殲滅しつつ、マリエがそのサポートに走る。
乱れぬ連携は敵の集団を押して、じりじりと岩竜までの距離を確実に詰めていった。
ふと気づくと、ガルム達の姿は消えていた。
だが、ガルムたちが勝手にいなくなった事に、気を向けるほどの余裕はなかった。
敵の波状攻撃と岩竜からの直接的、間接的な攻撃は止まるところを知らない。
「埒が開かない!」
イリスが叫んで、剣を横に薙ぐと、そこに丁度一瞬の空白ができる。
それを逃さずイリスが腰に剣を据えて一歩を強く踏み締めた。
光が放たれ、一拍置いて魔物たちが吹き飛んでいく。
それを見ていた僕には、何故か確信があった。
僕は自然とイリスと同じように腰に剣を構えていた。
あの時のイリスのように、僕を包む白い靄が膨れ上がり、視界を白く埋め尽くしていく。
「アル──」
イリスの声がやけにはっきりと聞こえる。彼女の目が大きく見開かれていた。
それに、構う暇もなく、僕の中から溢れる白に導かれるように剣を抜き放った──
一瞬の静寂がそこを支配していた。
剣戟が遅れて聞こえてくる。
次の瞬間、轟音が鳴り響き、魔物たちが吹き飛んで行く。
奥にいる岩竜が、たたらを踏んでいるかのように見えた。
「――アル! もう一度だ!!」
言葉はいらなかった。
僕とイリスが同時に剣を構え、同時に踏み込む。
二筋の光が煌めいて、次の瞬間、押し寄せていた魔物たちが吹き飛び、その刃は岩竜をも切り刻んでいた。
「っ!」
僕よりも早くイリスが、光を追うようにして飛び出す。
岩竜のものに劣らぬ咆哮を上げながら、イリスが突進していき、再び光が煌めくと、岩竜は一瞬で分解されたかのようにバラバラになって崩れ落ちた。
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